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──── その日の夜。
……ついに恐れていた時間が来てしまった。
就寝時間だ。
今日の新八っつぁんの1件で、私は布団に入るのが怖くなってしまった。
……よし、布団には何もいないな。
ペラリと布団を捲って、あの人形がいないことを確認する。
そして私はすばやく布団の中に入った。
……だけど、明日の朝起きた時に布団の中にいたらどうしよう。
目が覚めて、隣にいたら……?
ゾワーッと全身に鳥肌が立った時だった。
──── ミシ……ミシ……
外から微かに聞こえてきた、床が軋む音。
誰かが近づいてくるような音。
え、やだやだやだ。
怖いんだけど。
しかも、あろうことかその足音は私の部屋の前で止まった気がする。
気がする、というのも、怖すぎて障子の方を見れないのだ。
……ま、まさかまたあの人形が来たとかじゃないよね?
いやいやいやいや、人形が歩くわけないじゃん。
……でも、あの人形は捨てたのに千鶴の所まで戻ってきた。
燃やしたのに新八っつぁんの布団にいた。
もしかして、歩けるんじゃ………?
ドクン、と心臓が大きく跳ねる。
う、嘘。
やばいやばいやばい、考えれば考えるほどあの人形に思えてくる。
や、やめてやめて。
お願い来ないで!!!
……しかし、私の願いも虚しく。
スッ…と静かに障子戸が開く。
私は恐怖のあまり、ガタガタと震えながらギュッと目をつぶった。
そして次の瞬間、
原田「………名前?もう寝てんのか?」
名前「………さ、左之さんんんんんっ!!!(涙)」
大好きな、声が聞こえた。
正体が左之さんだとわかった瞬間、ガバッと起き上がる。
名前「……いや、ちょっと待って。左之さんに化けたあの人形とかじゃないよね?」
原田「そんなわけねえだろ」
呆れたように言う左之さん。
そ、そうだよね!さすがの人形も化けたりはしないよね!!
安心したせいか、私の瞳からはボロボロと涙が零れる。
ひいいい、怖かったああああああ!!
原田「お、おいおい、何泣いてんだ?」
名前「だ、だって怖かったんだもん!足音聞こえてきて、あの人形がまた来たんじゃないかと思って……」
グスンと鼻をすすれば、ふわりと左之さんのいい匂いが私を包んだ。
目の前には、鍛えられた大胸筋が。
原田「そりゃ、悪ぃことしちまったな。お前が眠れてねえんじゃねえかと思って様子を見に来たんだが……却って怖がらせちまったか。すまねえな」
名前「えっ………」
え、何なのこの人、神なの?
本当にこの人が私の彼氏?
いい男すぎて無理なんだけど、やばいんだけど!!
原田「………全部声に出てるぞ」
名前「!!!( ゚д゚)ハッ!!!!」
し、しまった!!!
ハッとして左之さんを見れば、めちゃくちゃ苦笑いしてた。
だってさあ!!こんないい男いないって普通!!!
そりゃ声に出したくもなるって!!!(開き直り)
原田「1人で寝れそうか?」
名前「無理です」
原田「即答かよ」
いやだって、この状況で1人で寝るのは自殺行為だってマジで。
もう無理だよ、恐怖で1人になんてなれないよ。
そんな事を思っていると、左之さんはゴロンとその場に横になった。
原田「んじゃ、今日は俺もここで寝ていいか?」
名前「どうぞどうぞ寝てください、何ならこの部屋に住んで」
原田「いや住むのはさすがに無理だけどよ…」
必死すぎるだろ、と苦笑いする左之さん。
もうこの際恥とか無いよ、うん。
だって怖いんだもん。
とりあえず今晩は左之さんが一緒に寝てくれることになったので、私は安心して布団に入った。
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