鬼灯の冷徹 | ナノ


4


サタンは言われた通りに廊下を進み、突き当たりに差し掛かる。

すると目の前に、立ち入り禁止という看板と気になる部屋が現れた。



サタン「(ん、チャイニーズランタン? ……あぁ、アイツの部屋か。ちょうどいい、覗いてやれ)」



──── ギィ……

部屋に踏み込むと、目の前に物の山が姿を現した。
机の上には巻物が広げられており、様々な薬草が置かれている。



サタン「(ほう、薬学にも造詣が深いのか。やはり侮れんな……)」



見たところ、漢方の研究をしているらしい。

サタンは広げられていた巻物を取ってみた。



サタン「なになに? 鬼の万病薬……」


《材料:蘭虫、冬虫夏草、牛の目、しゃれこうべ(削ったもの)、マンドラゴラ、シーラカンス、閻魔大王の煮凝り、サタンを干したもの(炙ったものでも可)》


サタン「……ん?」


《サタンを干したもの(炙ったものでも可)》


サタン「ほぎゃあああああっ!!」



干される!?
このままでは、あの男に干されてしまう!?

そう思った時である。



鬼灯「 ──── サタン様?」



背後でバリトンボイスが響いた。

サタンは冷や汗をかきながら振り返る。



サタン「ひぃ……っ」



そこにいたのは、炭火七輪を手にした鬼灯……。

脳裏に蘇るのは『炙ったものでも可』の文字。



鬼灯「今、炙る準備をしますので……」

サタン「オーマイゴーッド!」



サタンはEU地獄へと一目散に走り出した。



鬼灯「おや、もうお帰りですか? 今から金魚を炙るのに……」



鬼灯は、サタンが落とした巻物を拾い上げる。



鬼灯「……あ。コレ、サタンとサンタを書き間違えてますね。ていうか、サタンがオーマイゴッドって……」

名前「鬼灯様〜」



巻物を眺めていると、部屋の外から聞こえてきた声。

振り返れば、木炭の入ったダンボールを抱えた名前が部屋を覗き込んでいた。



名前「さっきサタン様が『オーマイゴット』って言いながら走って行っちゃったんですけど、何かあったんですか?」

鬼灯「ああ、どうやらお帰りのようですよ」

名前「ええ!?金魚の炙り、美味しいのに……。何か用事でも思い出したんですかね?」

鬼灯「……さあ、どうでしょうね」



不思議そうにピクピクと動く名前の耳。

鬼灯は、静かに巻物を机の上に置いた。



鬼灯「……さて、貴方も準備でお疲れでしょう。少し召し上がってはいかがですか」

名前「えっ、いいんですか!?やったー!鬼灯様の料理、すっごく美味しくて大好きなんです〜!」



嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねながら、食堂へと走って行く背中。

ふわふわと揺れる尻尾を見ていると、なんだか頬が緩みそうになる。

はしゃぐ名前の背中を、鬼灯もゆっくりと追うのだった……。

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