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閻魔「……ねえ君、デートとかどこ行くの?」
鬼灯「生きてる女性ならまず墓場へ、あの世にいる女性ならあのランドですかね?」
閻魔「なぜ亡者優先でランドへ!?」
鬼灯「いや、生者には『貴方もいつかこうなるんですよ』という意味も込めて」
閻魔「現世くらい謳歌させてあげてよ!」
もし鬼灯とデートをする現世の女性は要注意である。
高級レストランと見せかけて、本当に墓場へ連れて行きかねない。
すると、鬼灯は思い出したように女性の好みを付け加えた。
鬼灯「あと、明るい女性も好きですよ」
閻魔「君に明るい方がいいとか言われたくないだろうけど……」
鬼灯「なんてこと言うんですか。こんなに日々明朗快活に過ごしているというのに……」
そういう鬼灯の表情からは一欠片も明るさが読み取れない。
明朗快活とは…?と閻魔と名前は同時に思うのであった。
閻魔「そういえば、名前ちゃんは好みのタイプとかあるの?」
名前「私ですか?……うーん、どうだろうな……恋愛なんてしたことなくて」
閻魔「そうなの?やっぱり狼系っていうか、同種族がいいの?」
名前「いや、そんなことはないと思いますけどねぇ。……あ、でも。強いて言うなら私より強い人がいいかも」
閻魔「そうなるとかなり限られてくるねぇ……」
鬼でなくとも地獄のNo.3にいるだけあって、名前の戦闘能力は鬼灯に次いで非常に高い。
小さな体で大太刀をぶん回して周りを凍らせている少女の姿を思い出し、閻魔は苦笑いした。
しかしふと、閻魔の目にはテレビに釘付けになっている鬼灯の姿が留まる。
名前より明らかに強い男といえば、地獄では鬼灯くらいではないだろうか。
そして鬼灯の好みも、動物や虫に臆さない、明るい女性……。
……あれ?
閻魔「だったらいっその事、2人が付き合っtふごおおおっ!!?」
──── ズガアアアンッ!!
その瞬間、閻魔の頭に鬼灯の金棒が直撃した。
もちろん閻魔は地面にめり込んでいる。
名前「うわあっ、大王様!?大丈夫ですか!?鬼灯様、いきなりどうしたんですか!」
鬼灯「いえ別に」
名前「大王様を殴るの癖になってません?」
鬼灯「……そうかもしれませんね」
よいしょ、とめり込んだ閻魔を引き上げる名前。
……だから誰も、鬼灯の顔が若干赤くなっていたことには気づいていなかったのである。
そして、名前がなんとか閻魔を救出して、2人がもう一度席に着いた時だった。
鬼灯「……あ」
閻魔「ん?……あれ!!?」
名前「え、どうしたんですか……って、えええっ!!?」
鬼灯が何かに気づいたように画面を凝視した。
つられて画面を見た閻魔と名前も、驚いて声を上げた。
なぜなら、
閻魔「当たってる!!?」
なんと、画面には『3泊4日で行くオーストラリア魅惑の旅 地獄 鬼灯さん』という文字が映っていたのである。
名前「オーストラリア4日間の旅!!?」
鬼灯「閻魔大王!私、有休頂きますよ!」
閻魔「クリスタルなヒトシ君2個目じゃないの! 1個ちょうだいよ!」
鬼灯「嫌です、ご自分で当てて下さい!」
閻魔「じゃあワシも連れてけよ!」
鬼灯「絶対嫌です!……というわけで4日間、補佐官の仕事は任せましたよ、名前さん?」
名前「え、えええっ!!!」
即座に有休の申請をする鬼灯。
──── その後鬼灯はオーストラリアの旅を満喫し、閻魔と名前は仕事に忙殺された4日間を過ごすのであった……。
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