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──── ズガアアアンッ!!!
名前・桃太郎「「ギャーーーーッ!!?」」
何かが猛スピードで桃太郎と名前の視界を横切ったかと思うと、それは的確に白澤だけを標的にして地面に突き刺さった。
悲鳴を上げたのは白澤ではなく、その光景に驚いた名前と桃太郎である。
見覚えのある金棒に潰されて地面にめり込んでいる白澤。
この金棒は間違いなく、
名前「ほ、鬼灯様!?」
闇鬼神こと鬼灯の物である。
現れた鬼灯は眉間にシワを寄せていた。
鬼灯「何を考えてるんですか貴方は。あれほど一人で此処には来るなと言ったのに……」
名前「す、すみません!でもこの人材派遣の件、急ぎのようだったので……」
シュンと耳も尻尾も垂れ下がっている名前を見て、鬼灯は大きな溜息を吐いた。
桃太郎はというと、金棒に潰された白澤を見て青ざめている。
鬼灯「この淫獣の餌になりたいんですか?」
名前「なりたくないです」
白澤「誰が淫獣だ!!」
流石は神獣と言うべきか。
どうやってめり込んだ地面から出てきたのかはわからないが、無事なようだ。
ピンピンしている白澤を見て、鬼灯はチッと舌打ちをしている。
鬼灯「私の部下に勝手に手を出さないでもらえますか」
白澤「そんなこと言ったらこの子は僕の弟子だもんね。僕にこの子を預けたのはお前だろ?」
鬼灯「いつの話をしているんですか。今は私の部下です」
名前を挟んでバチバチと火花を散らす男二人。
桃太郎は目をパチクリさせて、そして名前はあたふたしながらその光景を見ていた。
名前「ほ、鬼灯様!そろそろ帰りましょ、きっと閻魔大王が忙しさで泣いてますよ!」
鬼灯「あんな阿呆は放っておいていいんですよ。今はこの淫獣の方が問題です」
白澤「だから淫獣って呼ぶな、この闇鬼神!」
名前「もう〜!ほら、帰りますよ!!」
白澤「えええ、帰っちゃうの!?寂しいなぁ、もう少し居てよ」
名前「また来ますから!」
鬼灯「駄目です行かせません」
名前「いいから!!あ、桃太郎!これから頑張ってね!!」
桃太郎「あ、ああ……」
自分よりも背丈の大きな鬼灯をせっせと引っ張りながら、その場を去って行く名前。
嵐のように去って行く2人を、桃太郎は唖然としてその様子を見ていたのだった。
……そして、彼が白澤の女癖の悪さにドン引きするのはこの30分後のことである。
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