ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


3

─── 試合開始の、笛が鳴る。


「「「お願いしアース!!」」」


2回戦、烏野vs伊達工の試合が始まった。
烏野は一番レシーブ力のあるフォーメーションでスタートだ。
そして、伊達工の1番の力強いサーブが烏野のコートへ放たれる。


西谷「大地さん!」

澤村「ッシ!」

影山「ナイスレシーブ!」


大地さんが安定したレシーブでボールを上げ、影山の元へしっかりと返った。
そして影山からの一番最初のトスを受けたのは、真っ先に空中に羽ばたいていた日向。
対する伊達工のブロックは1枚だけだ。

しかし影山が日向にトスを上げてから数秒、影山についていたはずの7番があっという間に日向に追いついた。
2枚ブロックに変化した相手の壁が勢いよく迫る中、日向は何とかコースを変えてスパイクを放ち、烏野は初得点をあげた。
得点を上げたものの、私の心臓はバクバクと跳ねている。


名前「リードブロック……やっぱり厄介……」


ブロックには、トスをある程度予測して跳ぶ "コミットブロック"と、トスがどこに上がるか見てから跳ぶ "リードブロック" の二種類がある。
伊達工が徹底しているリードブロックの方は、囮になかなか引っかからない。
リードブロックはブロックに一歩出遅れるというデメリットがあるのだが、あの7番はそれをものともせずに日向へと追いついた。
出遅れてもそれを補える身長と身体能力を持ち合わせているのである。

続く影山のサーブはリベロに拾われる。
そして7番の力強いスパイクがまるで大砲のように打ち込まれた。
しかしそれに素早く反応し、飛びついたのはノヤだ。


名前「ノヤーっ!!ナイスレシーブ!!」

西谷「龍スマン!カバー!!」

田中「よっしゃ!」

東峰「バック!!」

名前「いけぇっ、旭さんっ!!!」


田中がノヤのフォローに入ると、旭さんがトスを呼んだ。
旭さんは後衛から力強いスパイク……バックアタックを打ち込む。
しかしそれは伊達工ブロック2枚に阻まれてしまい、ノヤがブロックフォローに入ったもののボールは床へと落ちてしまった。


西谷「旭さんすんません!次は拾います!!」

東峰「おう、頼む。でも次は決める!」


よし、戦意喪失はしていない。
大丈夫そうだ。
聞こえてきた会話にホッと安堵する。

その後は伊達工のタッチネット、旭さんのブロックアウトと続き、点数は3対1と烏野が一歩リードしている。
しかし烏野は辛うじて伊達工のブロックから逃れているような現状だ。
このままブロックによってシャットアウトされて相手の連続得点を許してしまえば、流れは一気に持っていかれるだろう。
油断ならない状況である。
そしてついに、日向の速攻も7番によってドシャットを食らってしまった。

……だけど今の烏野は、3月とはまったく異なっている。
烏野にしかない、とっておきの武器があるのだ。
顔を上げれば影山が日向にトスを出す直前。
高く飛んだ日向へ意識を移す間もなく、ボールは伊達工側のコートに叩きつけられていた。


名前「ぃやったーーーっ!!!」


烏野の秘密兵器、変人速攻が炸裂。
私が喜びの声を上げるのと同時に、会場もワーッと盛り上がった。

この大会で変人速攻を使ったのはこれが初めて。
見たこともないほどのスピードの速攻に、会場中が釘付けだ。
混乱や賞賛、驚愕の声が混じり合い、大盛り上がりである。

その後も取ったり取られたりが続き、日向が前衛に回ってくると再び変人速攻が決まる。
たまらず伊達工はタイムアウトを取った。
変人速攻がまぐれではないことに気付き、応急処置を練っているのだろう。


「……でもさ、逆に言えば10番さえ止めちゃえば良いんだよな?」


聞こえてきた声に、私はピクリと反応した。


「目立ってんのはあの10番だけだし、他は伊達工のブロックの方が勝ってる感じだし」

「確かにな」


コートに目を戻せば、タイムアウトは明けたようだ。

伊達工の選手達も監督も、応援も。
会場中の意識が、日向に向き始めているのがわかった。
日向が光れば光るほど、相手のブロックは目が眩む。
囮としての効果がハッキリと現れ始めている。
烏野の思惑通りの展開に、私は口角を上げた。

すると……。


嶋田「おせーよ、試合終わってたらどうすんだよ!」

滝ノ上「だって、珍しくお客が来て……!」


ドタドタと慌てたような足音が聞こえてくる。
やって来たのは、この間町内会と試合をした時にもいた嶋田さんと滝ノ上さんだ。


名前「あ、こんにちは!」

嶋田「ん?君は確か……」

滝ノ上「烏野のマネージャー……だったか?」

名前「はい、2年の苗字名前です!先日はお忙しい中練習試合をして下さり、どうもありがとうございました!」

嶋田「あぁ、いえいえこちらこそ!」


ペコッと頭を下げれば、慌てたように嶋田さんと滝ノ上さんも軽く礼をしてくれた。


名前「今1セット目で烏野がリードしてます!変人速攻炸裂で伊達工がタイムアウト取って、今タイムアウト明けたところです!」

滝ノ上「おお、そうかそうか!リードしてるか!」

名前「はい!一緒に見てもいいですか!?」

嶋田「もちろんもちろん!」

滝ノ上「可愛いお嬢ちゃんとなら大歓迎だぜ!」

名前「ありがとうございます!」


やはり、味方が増えれば頼もしい。
張り切って手すりをぎゅっと握れば、今度は「はやくはやく!」という女子の声が聞こえてきた。

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