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─── 試合終了の笛が鳴る。
予選1回戦目、対常波高校。
セットカウント2−0。
勝者:烏野高校
名前「やったぁ!!勝った勝った!!」
相手チームのアップを見ていた時から、烏野の勝率の方が高いだろうとは思っていた。
それでも実際に勝てば物凄く嬉しい。
及川「名前ちゃん、イェーイ!」
名前「……」
及川「ハイタッチだよハイタッチ!そんな蔑むような目で見ないで!?」
岩泉「いよいよ痴漢で捕まるぞお前」
及川「岩ちゃん酷いよ!」
岩泉「つーか、敵チームにハイタッチ強要してどうすんだよ」
及川「名前ちゃんは敵じゃないもーん、俺の未来の彼女だもーん」
岩泉「もう捕まれお前」
結局この4人と最後まで試合を見ていた私。
明らかにハイタッチとは思えないくらい大きく両手を広げてきた及川さんをスルーして、私はテキパキとカメラを片付ける。
何だか意味のわからない言葉が聞こえたけれど、岩泉さんが及川さんにまたヘッドロックをキメていたので大丈夫だろう。
金田一「……アイツら、午後にもう1試合あることわかってんすかね。あそこまでいったら逆転は無いのに」
コートから撤収していく烏野を見て、金田一くんがポツリと呟いた。
彼の言葉を聞いて、私はニヒッと笑ってみせる。
名前「油断せずに常に本気でいく!それがうちのスタイルだよ」
金田一「う、ウス……」
名前「まあ、うちは見ての通りスタミナ馬鹿が多いからさ」
そう言って私はバッグを背負った。
すると、青城のジャージを着た人がこちらへ向かってくるのが見えた。
花巻「向こうのコートも終わった。伊達工の圧勝だ」
その言葉に、思わず体が固まる。
やはり、勝ち上がったのは伊達工か。
金田一「烏野対伊達工か……」
伊達工に一度、烏野は潰されている。
あれから旭さんは立ち直ったようだけど、そうは言ってもあの試合からまだ3ヶ月も経っていない。
きっと向かい合えば、あの時の記憶がフラッシュバックするはずだ。
……それでも。
名前「…… 烏野が勝ちます、絶対に」
旭さんなら、絶対に大丈夫だという確信があった。
旭さんは、自分が1人じゃないと気付いてくれたから。
後ろにはみんながいると気付いたエースは、そう簡単には崩れない。
名前「じゃあ、私はこれで失礼します」
及川「あ、待って!名前ちゃんの連絡先痛ああっ!!?」
ぺこりと一礼してから顔を上げれば、岩泉さんの華麗なる手刀が及川さんの頭に命中するところだった。
岩泉さんには感謝だ。
岩泉さんにはもう一度頭を軽く下げて、私はその場を去る。
そして、みんなの元へと急いだのであった……。
花巻「……今の誰?烏野のジャージじゃん」
岩泉「烏野のマネージャーだ」
花巻「へぇ。可愛いな」
岩泉「おい」
及川「だよねぇ、マッキー!ほら、岩ちゃんのせいで連絡先交換し損ねたじゃん!どうやってデートの約束取り付けんのさ!」
岩泉「お前ホントうんこ野郎だな」
花巻「なに、及川のお気に入りなの?うわ、かわいそーに」
及川「マッキーは味方だと思ったのに!!」
金田一「……あの、そろそろ行かないと……」
国見「(……何やってんだろ、この先輩達)」
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