ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


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名前「2週間前の不安はどこにいったのよ……」

黒尾《お姫ちゃんの可愛さに全て消え去った》

名前「……お姫ちゃん?」

黒尾《俺が付けたあだ名。名前から取った》

名前「可愛い」

黒尾《だろ、我ながらナイスネーミングだと思うわ。あー、イジり倒してェ。そんで半泣きの顔を見たい》

名前「お姫ちゃん逃げて、超逃げて!!」

黒尾《お姫ちゃんの半泣き顔見てみ、マジでグッとくるから》

名前「もうやだこの人」


"お姫ちゃん" とやらに命の危機が迫ってる!!
そりゃ逃げるよ、こんな危険な男が追っかけてきたら!!
猫っつーか完全に獲物を狙う肉食獣だよ!!


名前「完全にてっちゃんのおもちゃになってるじゃん、そのマネちゃん……」

黒尾《あー、でも俺が追いかけると毎回夜久の所に逃げられんのがショックだわ》

名前「お姫ちゃん大正解」

黒尾《俺のなんだけど》

名前「誰のものでもないだろ」


夜久さんは確か音駒のリベロの3年生だ。
ノヤが尊敬の眼差しで見ていたのをよく覚えている。
夜久さんにはスガさんと似たような雰囲気を感じる。


黒尾《で、相談なんだけど。どうすればお姫ちゃんに逃げられずに話せると思う?》

名前「今すぐ苛めるのをやめろ」

黒尾《それは無理。俺なりの愛情表現》

名前「めちゃくちゃ歪んでんな」

黒尾《最近はもう目が合っただけで逃げられて悲しい》

名前「2週間でトラウマ植え付けてんじゃん!どう考えても自業自得でしょうが!」

黒尾《それをついつい追いかけちゃうのは本能であり不可抗力》

名前「抗えよ本能に!!」


てっちゃんから逃げるマネちゃんの図……。
顔も本名も知らないマネちゃんだけど、きっとライオンに追いかけられている小動物みたいになっているはずだ。
なんかもう、可哀想でしかない。


黒尾《お姫ちゃんさ、バレーやってたらしくてさ。仕事は早くて完璧だしすっげぇ素直で頑張り屋なの。あんなにピュアな子初めて見たわ、マジで可愛い。休憩入ればドリンクとタオル配ってくれるんだけど、駆け寄り方とかマジで可愛い。なんつーか、パタパタ走ってくる感じが。仔猫みたいに小さくて目がキラキラしてて、もうマジで可愛いホント》

名前「マシンガントークとはこれか」

黒尾《名前ちゃんもやられてみ、あの可愛い声で名前呼ばれてみ?破壊力やべえから。「黒尾さん!」って呼ばれるだけでもう全部持っていかれる》

名前「なんでこんなに力説されてんの私」

黒尾《もうマジでしんどいオブザイヤー。あの可愛さは世界を救うわ。控えめに言って超絶可愛い、最高》

名前「さっきから言い回しがオタクなんだけど自分のキャラ捨てたの?」


とりあえず、"お姫ちゃん" がめちゃくちゃいい子で、てっちゃんに気に入られてしまったということはわかった。
そしててっちゃんのキャラ崩壊具合がすごい。


黒尾《あ、そんでさ。そっち明後日IH予選だよな、頑張れよ》

名前「………話変わりすぎて一瞬思考回路停止したんだけど!!めちゃくちゃ急だね!?」

黒尾《明日は試合に向けての調整とかで忙しいだろうから、今日のうちにと思って》

名前「その気遣いをお姫ちゃんにも分けてあげてください」

黒尾《あ、ちなみにこっちが本題な》

名前「嘘つけ、絶対オマケだろ!エールを口実に惚気にきただろ!!」


1日でこんなにツッコミを入れるのは初めてかもしれない。
これからはツッコミとボケをこなすオールラウンダーとして生きていこうかしら。


黒尾《あ、じゃあ話はそれだけだから。夜更かししないでちゃんと寝ろよ》

名前「んでもって自分で切り上げるんかい」

黒尾《猫は自由で気まぐれだから》

名前「本当に自由すぎる」


今日のてっちゃんにはかなり振り回されている気がする。
はぁ、と小さくため息を吐いた時だった。


黒尾《……絶対勝ち上がってこいよ。勝って、ゴミ捨て場の決戦やろうぜ。あのデカい舞台でさ》

名前「っ!」


……ああもう、本当に今日は振り回されっぱなしだ。
彼の今の一言で、心が奮い立った。


名前「……うん。私を全国に連れて行くって、言ってくれた人達がいるから。約束を破る人達じゃないから。だから烏野は行くよ、絶対に」

黒尾《……ん。待ってる……って言いてえところだけど、俺らも代表に選ばれなきゃならねえからな》

名前「そうだね。そっちも頑張って、勝ち残って」

黒尾《もちろん。……じゃ、おやすみ》

名前「おやすみ。ありがとう」


さっきまではあんなにふざけたやり取りをしていたというのに、こういう時の彼の声は心地良いから不思議だ。
通話終了のボタンを押し、私は一息つく。

……しかし。


名前「……って、やばい!!明日のお菓子作るの忘れてた!!」


次の瞬間には、私はダダダダッと物凄い勢いで階段を駆け下り、台所へと急いだのである。


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