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西谷「ホントだスゲー!写真でけー!」
ノヤの大きな声が聞こえてきた。
みんなのいる方を振り返れば、どうやらみんなは既に食べ終えているらしい。
ノヤと田中とスガさんが胡座をかいて雑誌を覗き込んでいて、旭さんや日向と影山も「なになに?」と話に入っていっている。
あの雑誌は……月刊バリボーか!
なんだろう、気になる!!
名前「2人も行こ!」
山口「あ、はい!」
月島「え、ちょっと……!」
ツッキーとぐっちーの手を引いて、「何見てるんですかー!?」とみんなの輪の中に入る。
すると、田中が私たちに見えるように雑誌の中身を見せてくれた。
田中「今年の高校生で特に注目ってなってる全国の3人の中に、白鳥沢のウシワカが入ってんだよ」
名前「うおっ、でっかく特集されてる!すごい!」
日向「白鳥沢って影山が落ちたトコ!」
影山「うるせえ!」
日向にとって白鳥沢は、影山が受験で落ちた高校という印象のようだ。
だけど小さな巨人ばかりの日向は、ウシワカについて全く知らないらしい。
名前「ウシワカっていうのは、今の宮城県内で間違いなくトップのエースだよ。本名は牛島若利ね」
日向「へぇー!」
澤村「うーん、これぞまさにエースって感じだよなぁ……」
東峰「おい、なんでこっち見てる!?」
いつの間にか大地さんもこちらに来ていて雑誌を覗き込んでおり、さらには旭さんに白い目を向けている。
凹んだ旭さんはノヤが慰めていた。
菅原「影山、こんな奴いるとこに行こうとしてたんだなー」
田中「そんであれだろ?超高校級エースに向かって "もっと速く動け下手くそ!" とか言っちゃうんだろ?」
影山「言いませんよ!」
そんな中、日向は渡された雑誌をじっと見つめていた。
日向「これを倒さないと、音駒とは戦えない……」
烏養「コラコラ、白鳥沢だけが強敵じゃねーぞ」
日向の言った一言に、烏養コーチが口を挟んできた。
菅原「他は……去年のベスト4とかですか?」
烏養「それももちろんだが、今年は他にも強敵がいる」
そう言って烏養コーチはジャージのポケットから何やら紙を取り出した。
烏養「守りと連携に優れた和久谷南。そして鉄壁の一言に尽きる伊達工業。どこよりも高いブロックを誇るチームだ」
"伊達工業" という名前に、私はゴクリと唾を飲み込んだ。
チラリと旭さんを見上げれば、彼も険しい表情をして話を聞いている。
旭さんだけではなく、2、3年生は全員顔を強ばらせていた。
烏養「伊達工には確か、今年3月の県民大会で2-0で負けてるな」
烏養コーチのその言葉で、何かに気付いたようにピクリと反応を見せたのは影山だ。
1年生にはこの間のゴタゴタの詳細は話していないけど、おそらく誰かから聞いているのだろう。
烏養「そんで次は……セッターながら攻撃力でもチーム1。もちろんセッターとしても優秀。恐らく総合力では県内トッププレーヤーの及川徹率いる青葉城西」
日向は青ざめて「だ、大王様……!」と声をもらしているし、田中は及川さんを思い出しているのか威嚇顔をしている。
烏養「あとは言わずもがな、超高校級エース牛島若利要する、王者白鳥沢。こんな感じだな。とまあ、この辺が俺的今年の4強だ。と言ってみたものの、上ばっか見てると足掬われることになる。それ忘れんなよ」
「「「オス!」」」
烏養「そんで、誰にももう "飛べない烏" なんて呼ばせんな」
「「「あス!!」」」
気合いを入れ直したみんなの、大きな返事が響き渡った。
するとそこへ、突然体育館のドアが開き、慌てた様子の武ちゃんが現れた。
武田「遅くなってゴメン!会議が長引いちゃって……それで出ました!!IH予選組合せ!」
組み合わせ表を受け取ったみんなは、それを覗き込んだ。
一回戦を勝ち抜けば、伊達工業と当たる組み合わせだった。
しかも、烏野のいるAブロックのシードは青葉城西。
みんなは難しい顔を浮かべた。
烏養「おい さっき言ったこと忘れてねえよな」
そう言って、烏養コーチが皆を睨んだ。
澤村「わかってます。目の前の一戦、絶対に獲ります」
そう言って再び、大地さんは何かを考え込むように組み合わせ表を見下ろしたのだった。
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