ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


3

《no side 》

─── 練習試合後、用具室にて。


山本「 ─── おい」


片付けをしていた田中に声をかけたのは、音駒の山本猛虎である。


田中「あ!?なんだてめえコラ、まだやんのかコラ!シティーボーイ、コラ!」


先ほどのように山本を威嚇する田中。
しかし山本は、何やらアタフタしていた。


山本「あの……そ、そっちの……マ、あの、じょ……マ……」

田中「え?」

山本「……マネージャーさんの名前なんて言うんですか」


小声かつ物凄い早口で告げた音駒高校の山本。
もちろんその言葉に田中はブチ切れである。


田中「てめェェェェ!!うちの大事な潔…マネージャーにちょっかい出す気か、あああ!?マネージャーって女神のほうかそれともうるせぇ美少女の方かどっちだ!!その頭のフサフサした部分しつこく触るぞ、オラァァ!!」


山本に掴みかかる田中。
しかし……。


山本「いや、話しかける勇気は無い」


清々しいほどはっきりと、そう言い切った山本。
暫くその場には沈黙が流れる。

そして ───。


田中「……潔子さん」

山本「っ!」

田中「……女神の方は清水潔子さん、うるせえ方は苗字名前だ」


田中の言葉に、山本はハッと目を輝かせた。


山本「なんと……!名が体を表している……!」

田中「そうだろうそうだろう!特に潔子さんの方は俺も話しかけるまでだいぶ時間かかったから、気持ちはわかる!……でもな、潔子さんに話しかけてガン無視されるのもいいぞ」

山本「うおはぁっ!!俺にはまだハードル高い!!」

田中「ハハハッ!なんだお前、結構良い奴だな!」

山本「お前もな。俺、山本猛虎だ」

田中「田中龍之介だ」


そう言って、ガッチリと握手を交わす2人。


田中「そうそう、うるせえ方の名前は面白くてすげぇ良い奴なんだぜ。アイツはコミュ力高ぇし話しやすいから、声かけてみろよ」

山本「お、おう……だ、だがやはりハードルがっ……!」


こちらで新たな友情が芽生えていた頃、水道でボトルを洗っていた名前は。


名前「……なんだろう。今どこかで悪口を言われた気がする……」

清水「……超能力?」

名前「もしかしたら目覚めたかもしれないです」



……一方、体育館では。


犬岡「凄かったぜショーヨー!ギュン!ブワッ!つって、あっ俺犬岡!1年!」

日向「お前もデカいのにズバッ!つって%#\☆♪→◯△$◎〒」


ぴょんぴょんと飛び跳ねながら楽しそうに会話しているのは日向と犬岡である。
そんな2人を、何だあの会話、と遠目で眺める月島。
ジト目で2人を眺める月島の近くを通りがかったのは黒尾だ。


黒尾「高校生の会話じゃねえなあ」

月島「!」

黒尾「でも、君はも少し高校生らしくハシャいでも良いんじゃないの?」

月島「……そういうの苦手なんで」

黒尾「ふーん……"若者"だねえ」



芝山「 ─── ご、ごめんなさい!すみません、モタモタして!」

東峰「いや、あの……すみませ、」

芝山「僕が悪いんです!許して下さい!!」


こちらはペコペコと必死に頭を下げる芝山と、それを見て焦っている東峰。
そんな2人を見て、澤村はため息を吐いた。


澤村「……あのヒゲチョコ……1年生が怖がってんじゃねえか」

海「こっから見ると、親子みたいに見えますね」

澤村「俺には誘拐犯に見えます」



西谷「………… (ジーッ)」

夜久「……あの……すげぇ見られてんスけど……」

菅原「す、すみません……目合わせないようにしてもらえれば、」

西谷「3番さんのレシーブ、凄かったっす!ウチのエースのスパイク、あんなにちゃんと拾える人初めて見ました!あんだけ全員のレシーブのレベル高いチームでリベロの座にいる実力、すげぇと思いました!俺も負けないっす!失礼します!!」


一方的に夜久にそう告げて嵐のように去っていったのは西谷である。


菅原「あ、コラ!そんな一方的に!……なんか、すみません」

夜久「……ヤバいっすね」

菅原「え?」

山本「彼だって相当レベル高いリベロなのに、慢心するどころかひたすら上だけを見てる。怖いっすね……」


そう言って、夜久は口元に小さく笑みを浮かべたのだった。

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