ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


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澤村「 ─── 正直言って俺達は顔合わせたばっかの面子で、デコボコでちぐはぐで、しかも今日がこの面子での初試合。そんで相手は未知のチーム。どんな戦いになるかわからない。壁にブチ当たるかもしれない。でも、壁にブチ当たった時はそれを越えるチャンスだ。行くぞ!」


黒尾「 ─── 俺達は血液だ。滞り無く流れろ。酸素を回せ。"脳" が正常に働くために。行くぞ」


両チームの主将の言葉が終わり、部員たちはコートに整列する。
ていうかてっちゃんの言葉……なんかすごいな、血液って。

─── そして。


「音駒高校対 烏野高校 練習試合を始めます!」

「しアス!」

「「「しアース!!」」」


因縁の対決が始まった。
選手たちが試合開始のため、それぞれの配置につく。

ちなみに今日の試合の記録は潔子さんで、私はカメラ担当。
といっても三脚で固定しているので実際は試合を見る形になる。
後は夜に録画を見ながらノートをまとめるのだ。
体育館の2階の通路にもカメラは固定してきた。

まずは研磨のサーブで試合は始まった。
彼の威力は無いけどコントロール力はある。
コーナーギリギリに打ち込まれたサーブを、旭さんがしっかりとレシーブする。
そして、いきなりの。

─── ドパッ!!


猫又「なんだあ、ありゃあ!?トス見てねえじゃねえか!」


猫又監督が驚いた声をあげた。
最初はやっぱり日向と影山の変人速攻。
相手をビビらせ、困惑させるには十分なほど、速すぎる攻撃。

その後も試合はどんどん展開していく。
すると、ツッキーと交代したノヤがこちらへ戻ってきた。
それを見た私は彼にドリンクを手渡す。


名前「お疲れ、ノヤ」

西谷「おう、サンキュ。……向こうのリベロ、やべぇな」

名前「うん。初見で旭さんのスパイク触ってたね」


烏養コーチが、音駒はレシーブが上手く穴が無いチームだと言っていた。
全員がレベルの高いレシーブ力を持つチームで、既にそのレシーブ力による安定感が垣間見えている。
その中で、リベロをやる実力。
ノヤだってレベルの高い選手だが、音駒のリベロもかなり上手い。


西谷「……お、戻るわ!これ頼む」

名前「あいよ」

西谷「どんまいドンマーイ!」


コートに戻って行くノヤ。
その後も旭さんや田中、日向が順調に点を稼いでいく。

そして10対7で烏野が3点リードになったところで、音駒がタイムアウトを取った。
烏野も各々で水分補給をして、コートに戻って行き、すぐに試合は再開された。
武ちゃんは烏野リードの展開に喜んでいるが……。


名前「……見られてますね」

烏養「……お前もそう思うか?」

名前「はい。ブロックがサイドに寄せられてましたし、多分日向の誘導ですよ。対策早いなぁ……」


さっき音駒のタイムアウトの様子を見た時、研磨が何やら話していた。
小さい声だったのでさすがに内容までは聞き取れなかったが……。
それでも、対策を編み出したのは研磨のはず。
研磨の目が明らかに、こちらを観察しているのだ。

それに、音駒の7番が日向を徹底的にマークしているようだ。
このままではまずい。
点差はどんどん縮まり、ついには追いつかれてしまいそうだ。


名前「……日向の速攻が効かなくなってきてますね。囮が効かないからこっちは伸びが見えない……」

烏養「慣れられたか……」

名前「正直、変人速攻は初見殺しみたいなもんですからね。あの7番みたいに日向のマークに意識を集中させれば、そのうち慣れちゃうでしょうね……」


ピピーッ!!

笛が鳴り響き、第1セット終了。
烏野−音駒、22−25。
一つ目のセットは音駒が勝った。

そしてすぐに2セット目が始まる。
今度は音駒がリードを引いた。日向の速攻は完全に慣らされ、ブロックに捕まり続けている。

そんな時、日向がまた速攻に飛んだが空振りをした。
その反動で、日向は後ろにドタッとひっくり返った。
しかし、それは……。


名前「っ!?今……!」

菅原「今、日向トスを見た……!」

烏養「たっ!タイムッ!」


予想外の出来事に、烏養はすぐにタイムアウトをとった。
駆け寄ってきた選手の一人、影山に烏養は言う。


烏養「影山!日向にいつもより少し柔めのトスを出してやれ。いつものダイレクトデリバリーじゃなく、」

影山「インダイレクトデリバリー……」


これはまだ試したことはない。
今の出来事は予想外の予想外なのだから。
影山は少し悩んだが、「やります」と言ってコートに戻っていく。
トスを変えるのは空中で日向に余裕を持たせるためだ。
さっき日向は空中でブロックを避けようとして、失敗してしまったからである。

バレーボールは高さがモノを言う球技だけど、高さだけが必要な競技ではない。空中戦をいかに戦うか。

─── "翼が無いから、人は飛び方を探すのだ。"

烏養前監督はよくそう言っていたらしい。
かつての "小さな巨人"を指して。

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