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名前「てっちゃーーん!」
黒尾「おっ、」
メンバーとアップをしていたてっちゃんに声をかければ、すぐにこちらに気づいて駆け寄って来てくれた。
名前「ドリンク作ってきたよ」
黒尾「ああ、犬岡と芝山から聞いてる。悪ぃな、仕事増やして」
名前「全然!こっちはマネが2人いるから平気だよ」
どうやら、さっきやって来た1年生は犬岡くんと芝山くんというらしい。
しかし、てっちゃんにドリンクを手渡していると、「ぬぅわあああああっ!!!」という叫び声が聞こえた。
何事かと声のしたコートの方を見れば、先ほど日向に突っかかっていたモヒカンの人が、衝撃を受けたような顔でこちらを見ていた。
?「く、クロさんがっ……女子と、知り合いだとぉ!!?ま、まさか……か、かかかのじょっ、」
黒尾「山本ー、試合終わったら走り込みな」
山本「す、すんません……」
山本、と呼ばれたモヒカンの人は、肩を竦めて謝っている。
やっぱりあの人、田中に似てる……。
黒尾「いやー悪いね、うるさいのがいて」
名前「あっ、ううん!うちにもうるさい人たちは結構いるから」
黒尾「ああ、その中に名前ちゃんも入ってるのか」
名前「……くっ、くそ、否定できないっ……」
大地さんから「うるさい」としょっちゅう怒られているため、あながち間違いではない (寧ろ正しい)。
うぬぬ、と唸る私を見て、てっちゃんはくつくつと笑っていた。
随分とイケメンに育ったな、おい。
黒尾「じゃ、俺戻るわ。ドリンクありがとう」
名前「あ、ううん!試合頑張ってね!」
黒尾「サンキュ。でも敵チーム応援していいわけ?」
名前「うぬあ、えええ……?」
からかうようなてっちゃんの一言に、思わず言葉に詰まった。
からかわれているのはわかるけど……。
名前「……確かに私は烏野のマネージャーだけど……烏野もてっちゃんも、どっちも応援してる。私にとってはどっちも大切だから。烏野のみんなは大切な仲間だし、てっちゃんは大切な従兄弟だよ」
ニッと笑ってそう伝えれば、てっちゃんは不意をつかれたような、驚いた表情になった。
そしてフ、と目を細めるてっちゃん。
その目は、ひどく優しかった。
黒尾「……変わらないねェ、名前ちゃんは」
名前「え、そう?」
黒尾「あ、身長の話ね」
名前「怒るよ、もう!」
黒尾「ごめんって、冗談冗談。じゃ、また後で」
名前「うん!」
去り際に、ぽんぽんと私を頭を撫でるてっちゃん。
山本「な、慣れてる……めちゃくちゃ女子の扱いに慣れてやがる、クロさん……!!」
黒尾「山本ー、試合終わったら俺んトコ来い」
山本「すっ、すんませんしたーーーっ!!!」
また余計なことを言ったらしく、モヒカン頭の人が全力で頭を下げていた。
私も試合の準備をすべく、烏野の方へ戻る。
……ノヤが、じっとこちらを見ていたとも知らずに。
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