ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


1

─── キーンコーンカーンコーン……


西谷「っしゃあ!部活行くぞ名前ーーーっ!!!」

名前「えっ、ちょっ、まっ、うぬおおわあああああっ!?」


……開始早々うるさくてすみません。
何が起こってるかというと、授業終了のチャイムが鳴った瞬間、ノヤが私の手を引っ張って体育館に向かって全力疾走し始めたのです。

てか荷物持ってきてないんだが!!
そもそもまだ片付けてないんですけど!!
しかも放課後なのになんでこんなに元気なんだコイツは!?

……いや、それよりも。
とりあえず今は、


名前「走るの速すぎだろ止まってええええーーーっ!!!」


私の叫びがノヤの耳に届くことはなかった……。


体育館についた瞬間ノヤは私の手を放し、そのまま中へ突っ込んで行った。
私には、学ランというお土産を残して。
バサッとこちらに放り投げられたノヤの学ランは私の視界を覆い、途端に真っ暗闇に包まれる。

影山がサーブを打ってるのがチラッと目に入ったから、おそらく取りに行ったのだろう。
でもすまん、ノヤのお手本のようなレシーブが見れるところだけど、私は今それどころじゃない。


名前「ぅおえっほい!げほっ、ごほっ」


久々にかなりのスピードで走ったもんだから、思い切りむせた。
ノヤの学ランを取り払い、私はゲホゲホと咳き込む。


西谷「ハハハハ!もっと女らしいむせ方できねえのかよ、名前!」

名前「うるっさい、誰のせいだと思ってんだ!つーか女らしいむせ方って何!?」

西谷「お前いいサーブ打つじゃねーか、すげえ奴入ってきたな!」

名前「話聞けコラ!」


途端に私から影山へと気移りするノヤ。
っとにこの男は忙しないんだから……。
すると、日向と影山が目をパチクリさせて私とノヤを交互に見た。


影山「苗字さん、この人は一体……?」

名前「ん?……ああ、そっか。初めて会うんだもんね。コイツがこの間言ったn」

田中「おおー!ノヤっさん!!!」

西谷「おー!龍ー!!」


もう、次から次へと……。
思わず溜息を吐くが、この賑やかさはやはり心地良い。
田中と一緒に大地さんとスガさんもやって来たらしく、日向たちに西谷を紹介している。


澤村「日向、影山。コイツが2年の西谷だ」

日向・影山「「ちわっす!!」」

西谷「おーっす!お前ら一年か!」

日向・影山「「オス!」」

西谷「さっきのサーブの奴!その目つき悪くてでかい方!お前どこ中だ!!」

影山「北川第一です」

西谷「マジか!強豪じゃねーか、通りであのサーブか!俺中学の時当たって2対1で負けたぞ!その時も1個上にサーブすげぇ奴いてよォ!」


菅原「……声デカいなあ」

澤村「相変わらずうるさい」


ノヤは持ち前のコミュ力と明るさでぐいぐいと会話を広げていく。
その様子を、大地さんとスガさんは苦笑いしながら見守っていた。


影山「西谷さんはどこの中学なんですか?」

西谷「千鳥山だ!」

影山「強豪じゃないですか!なんで烏野に……やっぱり、烏養監督の復帰を聞いて……?」

西谷「いや、俺が烏野に来たのは……」

日向・影山「「((もしや、苗字さん関連か……?))」」


いつの間にか、なぜノヤが烏野に来たのかという話になったらしい。
途端にノヤは真剣な表情になった。


西谷「女子の制服が好みだったからだ、すごく!」

日向・影山「「……」」

名前「ブフッwww」


拳を握りしめて、噛み締めるように言ったノヤ。
相変わらずブレないノヤと、物凄い顔をしている日向と影山に私は思わず吹き出した。


西谷「もちろん女子自体も期待を裏切らなかった!それになんつっても男子が学ランだからだ、黒のな!俺中学がブレザーでよー、学ランにすげえ憧れてたんだよ!茶とかグレーじゃなくて黒な!」

田中「わかる!」

西谷「な!」

名前「それな、男子は学ラン着なきゃだよな」

西谷「だろ!」

菅原「いや名前も入っていくのかよ(笑)」

澤村「全く、やかましい三馬鹿がそろったな……」

菅原「……とか言いつつ嬉しそうだよ?」

澤村「……お前もな、スガ」


日向と影山は目の前で繰り広げられるテンポの良い会話に、相変わらずポカンとしていた。


西谷「烏野は黒学ランだし、女子も制服可愛いし、家からも近い!迷わず決めたぜ!……はっ!!潔子さーん!!あなたに会いに来ましたーーーっ!!」

清水「!?」


意気揚々と烏野を選んだ理由を語るノヤだったが、突然ピクリと反応を見せて入り口を振り返る。
その視線の先には体育館に入ってくる潔子さんが。
途端に潔子さんに向かって飛びつこうとするノヤだが、容赦なくビンタを食らったのだった。


菅原「相変わらず嵐のようだな……」

日向「ゲリラ豪雨……」

名前「ゲリラwww」

澤村「ハハハ、やかましいだろ!……でもプレーはびっくりするくらい ─── 静か」


そう。
ノヤのプレーは本当に静かだ。
彼のレシーブには目を見張るものがある。
頬にもみじ型の赤い痕をしっかりと残したノヤが戻ってくる。


西谷「で、旭さんは?戻ってますか?」


その言葉に、私の心臓がドクリと音を立てた。
……実は、旭さんがまだ部活に戻ってきてないことは、ノヤには言えずにいた。


菅原「っ!」

澤村「……いや」

西谷「っ!! ─── あの根性無し!!」


気まずそうに目を逸らしす大地さんとスガさん。
私も思わず、唇を噛み締めた。
すると先程までの明るい表情が一変して、ノヤは怒りを露にした。


田中「こらノヤ!エースをそんな風に言うんじゃねぇ!」

西谷「うるせぇ!根性無しは根性無しだ!」

田中「待てってばノヤっさん!」

西谷「前にも言った通り、旭さんが戻んないなら俺も戻んねえ!」

名前「ノヤ!まって!」


声を荒らげ、バン!と乱暴にドアを閉めて出て行ったノヤ。
私は彼を慌てて追いかける。

……一方で、突然のことに体育館は静まり返っていた。


影山「……何ですか?」

田中「悪い……西谷とうちのエースの間にはちょっと問題が生じていてだな……」

影山「……苗字さん、一緒に行っちゃいましたけど大丈夫なんすか?」

田中「ああ、アイツは大丈夫だ」

影山「…?」

田中「アイツらは……幼馴染みなんだよ」



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