ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


2

澤村「挨拶!!」

「「「ありがとうございました――ッ!!!」」」


挨拶と片付けを終え、学校へ帰るためにみんなでバスに向かって歩く。


澤村「……武田先生はああ言ってくれたけど、いくら日向と影山のコンビが優秀でも、正直、周りを固めるのが俺達じゃあまだ弱い。…悔しいけどな」


そう言った大地さんは、少しだけ険しい表情をしていた。
今の烏野は攻撃に全振りしたようなチームであり、守備はまだまだ穴だらけ。
肝心なレシーブがままならなければ、いつか必ず限界が来てしまう。


及川「おお〜さすが主将!ちゃんとわかってるね〜」


突然前方から聞こえてきた声。
その人物を認識した私は「げっ」と顔を歪めて、近くにいた田中の背中に隠れた。
校門で私たちを待っていたのは、及川さんだった。


田中「なんだコラ、やんのかコラ」

日向「や、やんのか、こらぁっ……」


当然のように威嚇をする田中…と、その後ろに隠れて一緒に突っかかる日向。
しかし田中が突っかかっていってしまったことで、隠れ場所を無くした私。
無駄に動けば目立つため、気配を消すことに専念した。


及川「そんな邪険にしないでよ〜。アイサツに来ただけじゃ〜ん」


にっこりスマイルを浮かべている及川さんだけど、なんだかその笑顔は怖かった。
内心では絶対笑ってないと思う。

及川さんは日向の移動攻撃をほめていた。
でもそこからは、レシーブについて厳しい指摘をしてきた。
彼は真っ直ぐトビオを見据えて指差す。


及川「インハイ予選はもうすぐだ。ちゃんと生き残ってよ?俺はこの ─── クソ可愛い後輩を、公式戦で同じセッターとして正々堂々叩き潰したいんだからサ」


先程までのヘラヘラとした声とは違い、低い声。
指を差された影山は、及川さんを睨みつけていた。

すると、レシーブを指摘された日向が「特訓する」と宣言する。
しかしそんな日向を見る及川さんは、冷たい目をしていた。


及川「レシーブは一朝一夕で上達するもんじゃないよ。キャプテン君は分かってると思うけどね」


本当、言ってることは的を得ているから腹立つ。
すると、及川さんはさりげなく潔子さんに近づいて声を掛ける。


及川「君、きれいだねー。携帯の番号交換しない?」


潔子さんに何してんだコラ。
いつものように華麗にスルーする潔子さんだが、私や田中はもちろん大地さんやスガさんもその光景にムッとした。
……しかし、不意にバチッと合った視線。


及川「……あ!やぁかわい子ちゃん、また会えたね!」


及川さんはニコニコと笑顔を浮かべて、今度は私に話しかけてくる。
私は思わず「うげっ」と声を上げて、1歩後ずさった。


名前「ダ、ダレデスカアナタハ」

及川「やだなーもう、恥ずかしがらないでよ。……あれ?マネージャーってことはあのサポーター、誰かへのプレゼント?え、もしかして彼氏いるの?」

名前「口塞ぐぞコラ」

及川「むしろ塞いでほしいな〜、君の口で」


な、な、何なんだよこの人!!
やべぇ変態だ、ツッコミきれねぇ!
及川さんの発言にドン引きしていると、突然私の目の前が黒で埋め尽くされた。


田中「……お前、いい加減にしろよ」


黒の正体は田中のジャージ。
いつの間にか田中が私と及川さんの間に割り込んでいて、私を隠すように立ってくれていたのだ。

え、イケメンかよ。
今日はイケメンに見えるよ田中。


及川「……大会までもう時間はない。どうするのか楽しみにしてるね」


小さく咳払いをした後、何事も無かったかのようにそう言って去って行く及川さん。
周りの冷やかな視線から、今のやり取りをなかったことにしようとしているのだろう。
何なんだ、あの人。


影山「……き、気にしないで下さい。あの人、ああやって人ひっかき回すの好きなだけなんです」


及川さんの姿が見えなくなってから、影山が珍しく焦ったように大地さんにそう言った。
大地さんが気分を害したのかと思ったのだろう。

……しかし、大地さんの反応は予想とは異なるものであった。


澤村「………ふふっ」

影山「!?」


不敵な笑みを浮かべた大地さん。
その様子に、影山はギョッとしている。


澤村「……確かにインターハイ予選まで時間は無い。……けど、そろそろ戻ってくるんだろ?なぁ、名前」

名前「はい。戻ってきます!」

田中「おっ!」

日向「?何がですか?」


私を見て口角を上げる大地さんに、大きく頷いて見せる。
私たちが何の話をしているのか察したらしい田中も、不敵な笑みを浮かべた。


澤村「……烏野の "守護神"」




<< >>

目次
戻る
top
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -