ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


3

菅原「名前ー、今日一緒に帰んべ」


部活が終わって片付けをしていた時、私はスガさんに声をかけられた。
その言葉に、私は嬉しさのあまり飛び上がる。


名前「もちろんです非常に光栄ですマイエンジェル」

菅原「そのマイエンジェルって何なんだよ(笑)」

名前「マイエンジェルです(真顔)」


クスリと爽やかに笑うスガさんにノックアウトされそうになった。
先に外に出たスガさんに続き、私もみんなに挨拶をしてから、るんたるんたとスキップして彼の隣に並ぶ。
久しぶりに会ったせいか会話が進み、他愛ない話をしながらのんびりと帰り道を歩く。

暫くすると、スガさんはふと何かを思い出したように口を開いた。


菅原「……そういえばさっき、青城との試合嫌がってたみたいだけど……何か理由でもあんの?」

名前「ギクッ」


さすがスガさん、人のことよく見てる。
そりゃお前があんだけ騒いでたらな、とか思った読者の諸君、お尻ペンペンの刑な!!

マイエンジェルに顔を覗き込まれて、嘘をつけない私はすぐに白状した。


名前「……じ、実は……昨日、青城の人にナンパされまして……」

菅原「え」

名前「……す、スガさん?」


私の言葉を聞いて、ピタリと足を止めたスガさん。
何事かと私も足を止めて彼を見上げる。


菅原「……誰に?」

名前「え」

菅原「だから、誰に?何言われたの?何て答えたの?」

名前「ひえっ!?」


にっこりスマイルで私に詰め寄ってくるスガさんだが、その笑顔はいつものエンジェルスマイルではなく、ダークエンジェルに近い。
スガさんの周りのオーラが明らかに黒い!!怖い!!


菅原「名前」

名前「ひゃいぃっ!い、いえ、スッパリ断りましたんで!!助けてくれた人もいましたし!!あんな男に私はついて行きません!!」

菅原「そっか、そうだよな。よかった〜」


私が早口で捲し立てば、スガさんの笑顔がいつもの穏やかな笑顔に戻った。
な、何だったんだ今のは……めっちゃ怖かったぞ。


菅原「……ああ、でも締めなきゃな……」

名前「何を!?何を締めるんですか!?」

菅原「え?ああ、勝って兜の緒を締めよって言おうと思っただけ」

名前「いや絶対違いますよね!?目が笑ってないですよ!!」

菅原「気の所為だろ〜」


絶対気の所為じゃないと思う……。
さっきのスガさんの目はマジでやばかった、視線だけで人を殺せそうな目だった。

内心ヒヤヒヤしながら坂道を下っていると、「菅原さん!」と後ろから声をかけられる。
振り返ると、そこには影山がいた。


影山「……今回は俺、自動的にスタメンですけど、次はちゃんと実力でレギュラーとります!」

菅原「えっ!?」

影山「えっ?」


スガさんにビシッと宣言した影山だが、スガさんは素っ頓狂な声を上げた。
影山もスガさんの反応を不思議に思ったらしく、目をパチクリさせている。


菅原「……あ、いや。影山は俺なんか眼中に無いと思ってたから意外で……」

影山「……何でですか?」

菅原「体格も実力も断然お前の方が上だろ?」

名前「何言ってんですか、そんなことないですよ!」


さらりと言ったスガさんを、私は慌てて否定する。
すると、影山も私の言葉に同調するように頷いた。


影山「……そうっすよ。"経験" の差はそう簡単に埋まるもんじゃないです。……それと……」


そこへ後ろから日向と大地さん、田中がやってきた。
みんな大きな声でスガさんを呼んでいる。


影山「……ほ…他のメンバーからの…し…し…信、頼とか…」


言いづらそうに告げた影山。
やっぱり、相当中学の時の試合が応えているらしい。
しかし影山は、すぐにスガさんに向き直った。


影山「俺、負けません!」

菅原「……うん。俺も負けない」


影山の言葉に、スガさんも力強く頷く。
その光景に、私はホッと小さく息をついた。


名前「……いやー、青春青春!若いっていいねぇ!」

菅原「お前いくつだよ(笑)」


私はスガさんのバレーが、スガさんのセッターが大好きだ。
……あのコンビが大好きなのに。
もう、前みたいには戻れないのかな。


田中「置いてくなよな、名前ー」

名前「おー、すまんすまん!愛しのマイエンジェルから予約が入ったのでな」

澤村「名前も肉まん食べるか?」

名前「大地さん大好き」


不安を振り払うように笑顔を貼り付け、大地さんから肉まんを受け取った。
貰った肉まんは、ホカホカとすごく温かい。

だけど、そこからの話はさっきの青城が出してきた『条件』でもちきりだった。


田中「良いんスか、スガさん!俺は……俺は納得いかないっつうかっ!」

菅原「……そりゃあ悔しいけど……でも、影山が中学ん時と同じだと思ったら大間違いだって見してやりたいじゃん!」


未だ悔しげに顔を歪める田中に対して、明るく笑うスガさん。
スガさんって、なんて器がデカいんだろうと思う。


菅原「怖いのは影山"単品"じゃないってとこ見してやろう。なあ日向!」


そこでみんなの注目を浴びた私の隣の日向。
彼は先に肉まんを頬張っていて、田中と影山に怒られている。
みんなで肉まんを食べながら、これから烏野は新しいチームになってしまうのかと思うと、何となく寂しかった。


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