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名前「 ─── うわ……どうしよ」
さっそくスポーツ店に来た私。
……だけど、いきなり頭を抱えることになった。
最後に私がサポーターを買ったのは2年以上前だったはず。
その時よりもサポーターの種類がかなり増えていて、正直どれがいいのかわからない。
その最後に買った時も、同じくバレー部だった私の友達に選んで買ってもらった。
要は、自分で買ったことが無いのである。
手触りとかでいけるんだろうか。
とりあえずその辺のサポーターをさわさわしてみる。
……うん、わからん。困ったぞ。
うぬぬ、とサポーターと睨めっこをしていると、
?1「 ─── サポーターならこれがオススメだよ」
突然目の前を大きな手が横切って、サポーターを1つ取った。
名前「……えっ?ああ、そうなんですか?」
?1「そうそう。値段もお手頃で伸縮性と通気性もいいし、汗に濡れても劣化しにくいみたい。何よりこの値段で2枚セットだからね」
名前「おお、確かにそれはお得ですね!なるほど、ありがとうございます!」
そのサポーターを受け取って触ってみると、ほほう、確かになんかいい感じ。
それに何より、2枚セットってお得!
うーん、せっかくだからこれにしてみようか。
そんな事を考えながらサポーターとにらめっこしていると、つんつんと肩を突っつかれる。
?1「……そんなにしかめっ面してると、可愛い顔にシワがついちゃうよ?」
名前「……はい?」
その時、私は初めて声の主を見た。
最初に目に入ったのはその人の顔ではなく、水色っぽい色のラインが入った白いジャージだった。
かなり長身の男の人のようだ。
なかなかタッパあるな、と私はその人を見上げる。
なんと、めちゃイケメンだった!!(* ̄ii ̄)
……しかし。
?1「だから、眉間にシワよせてないで笑った方が可愛いよって」
##NAME1#「っ!!?」
そう言ってその人は、私の眉間をツンっと突っついた。
─── ズザザザザザッ
私は咄嗟に後ずさり、その男と距離を取った。
な、何だこの男!スキンシップ激しすぎか!
イケメンは目の保養になるので好きだが、チャラ男は苦手だ。
私の本能にある警戒スイッチが即座にオンになった。
名前「な、な、なんですか急に!?」
?1「いや、可愛いなーと思って^^*」
そう言ってニコッと眩しい笑顔を向けてくるその男。
^^* じゃねーよ、笑うとさらにイケメンなの腹立つな。
このナンパ男はかなり積極的な部類のようで (ナンパをする時点で積極的なのかもしれないが)、グイグイと私に詰め寄ってくる。
?1「ねぇ、よかったら連絡先交換しない?」
名前「いらないです」
及川「僕、青葉城西高校の及川徹っていうんだ」
名前「いや、聞いてないです」
及川「君の名前教えてほしいなー。どこの高校?」
名前「話聞け」
なんだコイツは、と私は眉を顰める。
話を聞かないのが新手のナンパなのか?
今の若者はこんな男にホイホイついて行ってしまうのだろうか。
とりあえず、この人執拗い。
その間にも私は、サポーターに詳しいサポーターさん(名前を覚える気はない)に距離を詰められていく。
後ずさりをしているうちに、トンッと背中が壁に当たった。
まずい、逃げられない。
私はついに、パーソナルスペースにサポーターさんの侵入を許してしまう。
……だがその時、私は確かに見た。
ゴゴゴゴゴゴ…といかにも効果音が付きそうな勢いで、サポーターさんの後ろからどす黒いオーラを発している人を。
及川「ねぇ、時間ある?よかったらお話しない?」
名前「いや、それはちょっと」
及川「つれないなぁ、少しくらいいいじゃない。ね、彼氏いr」
─── ゴ ス ッ
次の瞬間、ものすごい勢いでサポーターさんの脳天に、華麗なるチョップが入った。
決めたのは、サポーターさんの後ろに立っている別の男の人。
さっきのどす黒いオーラはこの人か。
及川「いったぁ!岩ちゃん何すんのさぁ!!」
?2「……テメェはこんな所で何をやっているんだ……?」
及川「ギクゥッ」
"岩ちゃん" さんは相当お怒りモードらしく、サポーターさんは冷や汗をかいている。
?2「うちのバカが大変申し訳ないことをした」
そう言って、"岩ちゃん" さんは律儀に私に向かって頭まで下げてきた。
だから私も慌てて、
名前「あっ、いえ!お構いなく!」
と咄嗟に言って頭を下げる。
……お構いなく? この返しは適切なのか?
?2「うちのクソ川に何かされなかったか?大丈夫か?」
"岩ちゃん" さんはサポーターさんにヘッドロックを決めながら、私の身を案じてくれた。
イケメンかよこの人。
ていうかクソ川ってなんだろう。
名前「あっ、いえ全然!それよりすみません、サポーター選んでいただいちゃって。ありがとうございます」
及川「いい子だよ、この子絶対いい子だよ」
しまった、サポーターさんのこと庇ってるみたいになっちゃった。
初対面の人と話すと咄嗟に改まってしまうのだ。
?2「そうか。いや、いろいろとすまなかった」
名前「いやイケメンかよ」
?2「ん?」
名前「おっとすみません心の声が」
なんだか "岩ちゃん" さんは、「よくわからない」と言いたげな顔をしていたが、"岩ちゃん" さんはサポーターさんの首根っこを掴んでその場を去って行った。
及川「いたたたた! じゃ、またねーかわい子ちゃん!」
最後のは聞こえないふりをした。
(よく考えたら人生初ナンパじゃん、田中に自慢してやろ)
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