ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


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菅原「 ─── たよ。名前、着いたよ、起きな」

名前「……んぅ……ハズキ〇ーペの卵とじ……」

菅原「ブフッ……ちょ、名前!起きて!(笑)」

名前「……んえ、?あ、おはようございます……」

菅原「お、おはようwww」


重い瞼を開ければ、ぼんやりと菅原の姿が名前の瞳に映る。
反射的に挨拶をすれば、ちゃんと返してくれた菅原。
次第に視界がはっきりしてくると、菅原が肩を震わせて笑っていることに気づいた。


名前「……なんで笑ってるんですか?」

菅原「い、いや、何でもないよ。それよりみんな降りたから降りるべ」

名前「わっ、すみません!!っていうか私、マイエンジェルの肩を……!!」

菅原「いいからいいから。ほら、おいで」


先輩の、しかもマイエンジェルの肩に寄りかかって寝てしまうなんて、何てことを……!!
と慌てる名前だが、菅原は特に気にしていない様子で笑っている。

どうやら車内には名前と菅原、武田しか残っていないようで、名前は菅原の後に続いてバスを降りた。
そして最後に武田がバスを降りたところで、校舎の方から武田を呼ぶ他の教師の声が聞こえた。


「武田先生ぇー!バレー部がテレビに映ってますよー!!」

「「「!!!テレビ!?」」」


その教師の言葉に即座に反応を見せたのは日向と西谷、そして田中である。
影山も分かりやすく興奮したような表情になっていた。


西谷「名前、テレビだ!!行くぞ!!」

名前「ふぇ?ちょ、まっ、みぎゃあああああっ!!?」


覚醒したばかりの頭に西谷の声が響いたかと思えば、グイッと物凄い力で手を引かれる。
名前はそのまま全力疾走する西谷に引きずられて、奇妙な悲鳴を残してあっという間に校舎の中へと姿を消したのであった。
それに続き、田中と日向もダッシュで校舎へと入っていく。

残りの部員も校舎に向かう中、菅原は未だ肩を震わせて笑っていた。


澤村「……?何笑ってんだ、スガ」

菅原「いや……さっき名前が寝言で……"ハズ〇ルーペの卵とじ" って……」

澤村・東峰「「ブフッwww」」


菅原から思わぬ爆弾が投下され、澤村と東峰は思い切り吹き出した。
そして3年生3人は、職員室に入るまで肩を震わせていたのであった……。


********


名前「……テレビって……」

月島「ローカルニュースじゃないですか」

西谷・田中「「うるせえ!テレビはテレビだ!!」」


挨拶をして職員室に入ったバレー部一同は、一目散にテレビの前へと駆け寄る。
ようやく西谷から解放された名前はテレビの画面に目を移し、それが全国放送ではなくローカルニュースだと気づいた途端にシラケた顔になった。
同じく月島も白い目で西谷と田中を見ている。

画面には男バレのIH予選の様子が映されており、聞き覚えのある学校の名前がいくつか放送されて映っていく。

そして王者の白鳥沢は初戦を25-10、25-6のストレートで勝ったようだ。
圧倒的な実力の白鳥沢の"ウシワカ"が映され、名前達はゴクリと唾を飲み込む。

続いてAブロック、烏野がいるブロックだ。
先程まで居た体育館が映り、即座に日向が反応する。
しかし映し出されたのは青城の及川。
途端に田中がコメカミに青筋を立て、名前はケッと吐き捨てた。


〈 ─── そして明日、この青葉城西に明日挑むのが、ベスト8確実と言われていた伊達工業をまさかのストレートで下し勝ち上がってきた、古豪・烏野高校です。〉


やっと自分達の学校名が出て、日向と西谷、そして田中は目を輝かせた。
しかしようやく自分達が映ると思いきや、パッと画面が切り変わって映ったのは全く別の人物だった。


〈明日の3回戦の相手の烏野高校の印象を聞いてみました。〉

及川〈いいチームですよね!全力で当たって砕けてほしいですネ!〉


一気に全員の目が据わる。
田中は苛立ちのあまり静まり返っており、名前に至ってはまるで般若のような顔で舌打ちをしていた。

他の教員が、さっきはちゃんと映っていたと慌てたようにフォローを入れてくれたが、その言葉に先程のように舞い上がる者は誰もいない。


澤村「先生、ありがとうございました」

「あっいや…」

澤村「よーしそれじゃあ ─── やるか」

「何を!?」

武田「ミッミーティングですよ!」


まるでこれから喧嘩でもしに行くかのような形相の排球部員に、その教員が震え上がるが、武田が慌てて補足をした。


そのまま体育館へ向かい、全員でホワイトボードの前に座った。
そして烏養と共に、明日の青城戦に向けての対策を練る。

青城と戦うには、まずはあの及川の強烈なサーブを何とかしなければならない。
そのため未だレシーブの不得意な日向と月島はサーブレシーブには参加せず、攻撃のみに専念することとなる。
言わば分業だ。

未だ烏野は全体のレシーブ力が高いわけではない。
及川のサーブをいかに凌げるかどうかが明日の勝敗にかかってくるだろう。


烏養「あ、あとな。お前ら青葉城西見て "あ、やべえ強え" って思ったろ」

「「「……」」」


烏養に図星を突かれ、部員達は押し黙って気まずそうに目を逸らした。


烏養「でもよ、例えば伊達工の試合をもし同じように観客席で見てたら、"なんだよあのブロックまじ恐い勝てない" って怯むだろ。 ─── でも戦えた、勝った。明日もそうだ」

「「「っしゃあああ!!!」」」


ニッと笑って言った烏養の強気な言葉。
途端に部員達の士気が上がり、口々に雄叫びを上げる。

そうだ、弱気になっていても仕方がない。
名前も笑顔を浮かべ、みんなと同じように「おおお!!」と雄叫びを上げて拳を突き上げた。

明日も彼らの背中を押そう、全力で応援しよう。
それが自分の選んだ、戦い方なのだから。


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