ハイキュー 『君の隣で』 | ナノ


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とぼとぼと1人歩く道にほとんど人はいない。
当然、今は部活の時間帯だからだ。
田中には用事があると言ってしまったものの、本当はそんなものはない。

……1話目で読者のみなさんは察していると思うが、私が部活に行けない理由には "旭さん" が絡んでいる。

3年生の東峰旭さん。
彼は烏野排球部のエースだ。
彼と私の間に何があったかというと、実はちょっと……ケンカみたいなことをしてしまった。
2、3週間くらい前のことだけど、未だに顔を合わせてないし、気まずくて部活にも行けない。

……だけど、私が悪かったんだと思う。
私も田中と同じでデリカシーなんて持ち合わせてないから、旭さんの懐にズケズケと入り込んじゃって。
あの人だって責任感じていっぱいいっぱいだったはずなのに。
あの時彼を鼓舞するつもりで私が言った言葉は、反対に彼の心を抉ってしまった。

だけど、そろそろちゃんと謝りに行きたいと思っている。
旭さんに突き放されたり嫌われたりするのが怖くて、ずっと謝りに行けていない。
でも、ずっとこのままの状態でいる方がもっと嫌だ。
逃げてばっかりじゃダメだ、絶対に。

旭さんは明日来るのかな。
来てたらちゃんと謝りたいなぁ……。

旭さんの事を考えながら歩いていれば、ふと思いついたのは彼の身に付けているバレー用品。
そういえば、旭さんのサポーターそろそろ替え時だったような気がする。
あの時のお詫びということで、新しいサポーターをプレゼントするのはどうだろう。

うん、いいかもしれない!
そうと決まればちょっと遠いけどスポーツ店に行こう。

……喜んでくれるかな、旭さん。
私は旭さんの笑顔を想像しながら、るんたるんたとスキップしながら買い物をしに行くのだった。

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