第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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名前「いい加減にしなさいよ!!その土手っ腹に風穴開けるわよ!?」


名前「 ─── 大丈夫?出久」


君は、いつもそう言って僕を助けてくれたよね。
皆は無個性の僕を馬鹿にするけど、君だけは違った。
真っ直ぐに僕を見つめる碧い瞳はとても綺麗だった。
君は僕の中で、オールマイトと並ぶヒーローだよ。

─── 名前ちゃん。


*******


爆豪「 ─── そんなにヒーローに就きてんなら効率いい方法あるぜ。来世は個性が宿ると信じて、屋上からのワンチャンダイブ!!」

緑谷「っ!!!」


その言葉に、緑谷出久は思わず彼を睨みつけた。
しかし……。


爆豪「なによ?」

緑谷「……っ」


彼の爆発する右手と挑発するような顔。
それを見ると、何も言えなくなってしまう。
いつもこうだ。
自分は無個性だからこうやって虐められて……。

こんな風になったのはいつからだろう。
自分に個性がない、ということがわかってからだった気がする。
幼馴染みの爆豪勝己からだけではない。
無個性ということで、クラスのみんなからいじめられる。

─── それでも緑谷は、ヒーローになりたかった。
そして、そんな自分を受け止めてくれる友達はたった一人だけ。


緑谷「……名前ちゃん、まだいるかな……」


隣のクラスの風花名前。
彼女もまた、緑谷と爆豪の幼馴染みである。
名前は美人で明るくて本当に優しくて、どこへ行っても人気者。
個性も凄く強い。

自分とは真逆の人間なのに、名前はこんな自分にも手を差し伸べてくれる。
女の子なのに勇敢で、あの爆豪にも唯一真正面から立ち向かっていくような人物だ。

しかし緑谷は、名前と爆豪の関係をイマイチわかっていなかった。
幼馴染みであることには変わりない。
爆豪が緑谷に何かすればすぐ駆けつけて喧嘩を止めてくれた。

だけどその一方で、名前と爆豪は一緒に帰ったりお互いの家に遊びに行ったりすることも多かった。
……喧嘩するほど仲がいいというやつだろうか。

だが今はとにかく、早く名前の元に逃げたかった。
別に、名前に爆豪をやっつけてもらおうとかそういうのではない。
緑谷の心の拠り所は、今となっては名前しかいないのだ。


緑谷「(……この時間ならまだ、名前ちゃんは教室で家計簿つけてるはず……)」


名前はしっかりしてる子だ。
2年前に父親が病気で他界してしまった名前。
ヒーローである母親はほとんど家に帰って来られないらしく、ほぼ一人で家計をやりくりしていて毎日暇があれば家計簿をつけている。

それに名前には弟と妹がいる。
その2人は双子で、まだ8歳と幼い。
名前は、普段は一人で幼い弟たちの面倒を見ながら生活をしているのだ。

そのせいか年齢の割にかなりリアリストで、ちょっと変わっているところもある。
……まあ、学校で家計簿つけながら金勘定している時点でもう変わり者なのだが。

緑谷はこっそりと隣の教室を覗く。
そこにはいつもの席で、黙々とノートに何かを書き込んでいる名前 ───

……は、いなかった。


緑谷「……あれ?」


もう帰ってしまったのだろうか。
もしかして、爆豪と帰ったのだろうか。

……いや、今日は爆豪の他に2人男子が横にいたし、名前と帰ってるとは考えにくい。
まあ、いないのならば仕方ない。
正直名前と話せないのは精神的に折れてしまいそうだった。

しかし、


緑谷「っ! そうだ、僕のノート……!!」


先程爆豪に爆破され外に投げ捨てられた自分の大切なノートの存在を思い出し、緑谷は一目散にその場を去ったのだった…。

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