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──── ツンと鼻をつくような独特な匂いで、私は意識を回復した。
ゆっくりと目を開ければ、見覚えのない天井。
ここは……?
リカバリーガール「気が付いたかい?」
名前「……あ……」
私の顔をひょっこりと覗き込むのはリカバリーガールだった。
ということは、ここは……保健室?
一体何があったんだ、どうやって戻ってきた?
あの後、どうなった?
相澤先生と13号先生は?オールマイトは?
ぐるぐると疑問が駆け巡る。
頭が痛い。
名前「……みんな、は……」
リカバリーガール「第一声が自分よりみんなの心配かい?誰かにそっくりだねぇ、あんたも」
なんだか呆れたような、そして懐かしむような声音だった。
何故か鉛のように重い体をゆっくりと起こす。
リカバリーガール「皆は無事だよ。相澤先生も13号先生も入院中だが命に別状はない。オールマイトも大丈夫。生徒も緑谷出久以外は元気さ」
名前「っ!い、出久!?出久はどうしたんですか!?」
リカバリーガール「今度は足を壊して来てねぇ。私の治癒でほぼ治ったけれども。あんたが目覚める前に起きて、先に帰ったよ」
名前「そ、そうですか……無事なら、よかったです……」
リカバリーガールから話を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
クラスメイトはもちろん、先生達も無事で本当によかった。
リカバリーガール「……で、あんたの方だが。特に怪我は無いみたいだよ。まあ、恐らくキャパオーバーで失神したんだろうね」
名前「……キャパオーバー……」
リカバリーガールの言葉に、じわじわと実感が湧いてくる。
ああ、やっぱり私は使ってしまったのか。
大嫌いで恐ろしくてたまらない、あの技を。
ぎゅっと、首元のアネモネを握りしめた。
リカバリーガール「きっと明日は臨時休校だろう。けれどきっと警察が事情聴取に来るだろうね。今日は帰ってちゃんと休んで、明日に備えなさい」
名前「……はい。すみません、ありがとうございました」
どうやらもう帰ってもいいらしい。
窓から見える景色はすっかり暗く染まっていた。
急いで片付けをしていると、「そうそう」とリカバリーガールに話しかけられる。
リカバリーガール「あんたのお友達が廊下で待ってるよ。行ってあげな」
名前「お友達……?」
時計を見れば、もう20時。
あのUSJでの事件からだいぶ時間も経っているはずなのに。
慌てて荷物を整理してドアを開ければ、そこにいたのは……。
名前「……勝己……」
廊下の壁にもたれかかり、眉間に皺を寄せて立っていたのは、勝己だったのである。
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