第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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──── 懐かしい夢を見た。


目の前に広がる光景。

豊かな緑に、キラキラと光を反射する綺麗な川。
そして、楽しそうに笑う4人の姿。

……ああ、あれは幼い私だ。7歳くらいだったかな。
そして同じく幼い勝己、そして勝己のお父さんとお母さん。
そうそう、一緒にキャンプに行ったんだっけ。


懐かしくて思わず彼らに手を伸ばしかけるが、私の体は動かない。

まるで金縛りにあっているように体を動かせず、声も出せないのだ。


……ああ、そういうことね。
何もせずに見てろってこと。
これから起こる、私にとってはトラウマにもなった出来事を。

ねえ、神様。
貴方は残酷だね。



……そしてその時は、突然やってくる。



光己「きゃあああああっ!!」



光己さんの悲鳴が聞こえる。
ああ、ついに来てしまったか。

視線を向ければ、震える私を抱き締める勝己、そんな私達を庇うように立っている光己さんと勝さん。

そんな彼らの前には大きな熊が2頭。
今にも飛びかからんばかりの目付きで、その熊は私達を威嚇していた。

しかし2頭の熊が吠えた、その時だった。


一瞬にして、張り詰めた空気。
殺気にも近いものを放つのは、幼い少女。


──── ドサッ ドサッ ……


突如、大きな音を立てて2頭の熊の体が倒れる。
そのまま熊は動かなくなり、息絶えた。



爆豪「……名前……?」



私を呼ぶ、幼い勝己の声。

彼の手の中でぐったりとしている私の髪は、銀色に染まっていた。





──── 私の個性は『天候変化』。

かなり広義的な個性であり、未だにこの個性でできる技を把握しきれていない。
最近になって見つけた技もいくつかある。

そして夢で見た、あの日に見つけた技。
それはターゲット付近の気圧を一気に下げ、最終的には殺してしまうという恐ろしい技だった。


山にはデス・ゾーンという、酸素の補給がなければ人間が生命を維持できなくなる地点があるという。
それは一般的には高度8000mの地点と言われている。
デス・ゾーンでは人体は順応できず、身体機能の低下、意識の喪失、そして最終的には死に至る。

私のこの技は、ターゲットのいる場所のみをデス・ゾーン状態にするというものだったのである。

この出来事は、私のトラウマとなってしまった。
熊とはいえ生き物を個性で殺してしまった挙句、キャパオーバーで倒れたのだ。


……しかし、いつまでも現実から目を背けるわけにはいかない。

私には、守らなければならないものがあるから。
守るために、できる事は全てやると決めたんだ。


銀色の髪のまま意識を失った幼い私を半泣きで揺さぶる勝己、バタバタと慌てたように動いている光己さんと勝さん。

そんな光景を遠くから見ながら、私は静かに目を閉じた ──── 。

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