第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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《緑谷 side 》


オールマイトはもう、限界を超えてしまっている。
僕だけが、オールマイトのピンチを知っている。

死柄木と呼ばれた男と黒霧と呼ばれた黒いモヤがオールマイトに襲いかかるのを見て。

──── 考えるよりも先に、体が動いていた。


両足にワンフォーオールを使い、対峙する彼等の前へと飛び込んでいく。

完全に今ので両足は逝った。
あまりの痛みに気が遠くなりそうになるが、何とか持ち堪える。

それに、何とか黒霧の本体には届きそうだ。
かっちゃんの言う通りなら、あそこを狙えば飛ばせる……!!



緑谷「うらあああーーーーっ!!!オールマイトから、離れろーーーーっ!!!」



痛みを振り切るようにして拳を振り上げた、その時。


──── ぬっ、と目の前に手が現れた。

この手は、触っただけで相澤先生の腕を破壊していた手。
この手に触れてはいけない。

それなのに、この状態で避けられるはずがなくて。



黒霧「二度目はありませんよ!!」

死柄木「いひひひひっ、あはははははっ!!!」



不気味な二つの声が脳内に響く。

ああ、もう駄目だ。
あの手が、僕の顔面を掴む ────

……その、直前だった。



名前「 ──── っ、やめてーーーーーーーーっ!!!!!」



響き渡ったのは、よく知っている声。

名前、ちゃん……?

彼女の名前が頭に思い浮かぶ程、目の前がスローモーションのように見える。


──── その瞬間ことである。

目の前から、手が消えた。



緑谷「うわっ……!!?」



突然の事に混乱してバランスを崩し、僕の体はドサッと地面に落ちる。

そして次の瞬間、ガタガタと地面が割れるような音が響いたかと思えば、地面が揺れ始めた。

じ、地震……!?
ピシピシと地面にヒビが入っていき、そのヒビからはゴーゴーと強い風が吹き上がる。



死柄木「が、はっ………ぐあっ……!!」

黒霧「ぐっ、ううううっ………がっ、!!」



次に聞こえてきたのは、敵の苦しむような声。
痛みを堪えながら顔を上げて、何とかそちらを見る。

……一体何が起こっているのか、わからなかった。



死柄木「……ん、だよ、これっ……がはああっ!!!」

黒霧「しが、らきっ……ぐあああっ!!」



首を掻きむしり、頭を抱え、異常な程に苦しむ敵。
死柄木と呼ばれた男に至っては、口から大量の血を吐き出している。

その間にも地響きの音と共にガタガタと揺れる地面。

な、なんだ!? 一体何が……!?
まさか、これも誰かの個性か……!?

そう思い、咄嗟に名前ちゃん達のいる方へに目を向ける。

……そして、己の目を疑った。



──── 碧い瞳をギラギラと妖しく光らせ、長い髪を靡かせて、そこに立つ少女。

その髪はいつもの柔らかな胡桃色ではなく、風の色……美しい銀色に染まっていた。


吹き荒れる風に混じって、名前ちゃんのペンダントがキラキラと光を散らして揺れている。



名前「……出久に……触るな……!!!」

死柄木「ぐっ、うあああああああーーーーーっ!!!!」



聞いたこともないほど低く、地を這うような名前ちゃんの声。

恐ろしい形相で、名前ちゃんは敵を睨みつけていた。


何が……。
あの子に、一体何が。
これは、名前ちゃんがやってるのか……?

わけが分からず、ただその光景を呆然と見ることしか出来ない。
ゴーゴーと叩きつけるように吹く風に飛ばされぬよう、踏ん張ることしかできない。


……そんな状況の中、一番最初に動いたのは。



爆豪「 ──── やめろ、名前っっっ!!!!!」



豹変した名前ちゃんの前に飛び出したのは、かっちゃんだった。

そのまま名前ちゃんに飛び付き、抱き締める。
まるで名前ちゃんを守るかのように、かっちゃんは彼女の小さな体を抱き締めていた。



名前「 ──── っ!! かつ、き……?」



聞こえてきたのは、いつもの鈴の音のような声。

次の瞬間、フッ……とまるで何事もなかったかのように地鳴りと風が止んだ。



死柄木「がはっ……はぁっ……はぁっ……」

黒霧「ぐっ、はぁっ……はぁっ……」



敵も苦しみから解放されたのか、どさりと膝をつき、ゼェゼェを息を切らしている。

誰も状況が飲み込めず、敵も体力が残っていないのか倒れ込んでおり、誰一人としてその場から動かなかった。

全員が放心状態で座り込んでいた、その時。


BANG BANG!!!


施設内に轟いたのは、銃声。
死柄木の手と両足を、銃弾が撃ち抜いた。

この攻撃は、もしかして……!!!



根津「ごめんよ、皆。遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めてきた!」

飯田「1-Aクラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!」



入口の方を見れば、ずらりと並んだヒーロー達。

た、助けが来たんだ……!!!

先生方は次々と敵を一層していく。
倒れていたはずの13号先生も残りの力を振り絞り、ブラックホールで死柄木と黒霧を吸い込み始めた。

しかし吸い込まれながらも黒霧がワープを発動し、二人は跡形もなく消え去っていった。



──── 今度は殺す、オールマイト。次は手に入れる、風花名前。



そんな、恐ろしい言葉を残して……。

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