第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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オールマイト「……加減を、知らんのか」

死柄木「仲間を助けるためさ、しかたないだろ?さっきだってホラそこの……あー、地味な奴。アイツが俺に思い切り殴りかかろうとしたぜ?誰が為に振るう暴力は美談になるんだ、そうだろ?ヒーロー?」



彼の言葉に思わず出久の方を見る。
出久が、殴りかかろうとした……?

出久は目を見開き、恐怖で青ざめていた。



死柄木「俺はな、オールマイト!怒ってるんだ!同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ、善し悪しが決まる、この世の中に!なにが平和の象徴!所詮抑圧のための暴力装置だおまえは!暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世に知らしめるのさ!」



何を、言っているんだ。
この人は、異常だ。

以前手を差し伸べてしまったあの人が、今は気味が悪くて仕方が無い。



オールマイト「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘吐きめ」

死柄木「バレるの、早……」



図星を突かれて、死柄木さんはニヤリと口角を上げた。

その殺気に私達は瞬時に身構える。



轟「3対6だ」

緑谷「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた……!」

切島「とんでもねえ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ、撃退できる!!」



覚悟を決めて奴らをしっかりと見据えた時。



オールマイト「ダメだ!!逃げなさい」



私達の行動はオールマイトに制される。

驚いて私達はオールマイトを見た。

どうして、オールマイト……。
そんなボロボロになった体で、一人で戦うなんて。
この場には相澤先生も13号先生もいない、だから私達が加勢するしかないのに。



轟「……さっきのは俺がサポートに入らなけりゃやばかったでしょう」

オールマイト「それはそれだ、轟少年!ありがとな!しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!」



頑なに私達が前に出ることを許さない、オールマイトの本気の戦闘が始まった。

そのあまりの気迫に私達は息を飲む。

真正面からの殴り合い。
とんでもない衝撃波に飲み込まれ、私が思わず後ろにひっくり返りそうになったところを勝己に支えられる。

しかし勝己の目は、オールマイトに釘付けだった。



オールマイト「ヒーローとは、常にピンチをぶち壊していくもの!!敵よ!こんな言葉を知ってるか!?更に向こうへ!!Puls ultra!!」



──── ドオォォォォンッ……


最後の一撃で吹っ飛ばされた脳無は屋根を突き破り、屋外に飛んでいった。

凄すぎて、言葉が出てこない。



切島「コミックかよ……。ショック吸収を無いことにしちまった。究極の脳筋だぜ」

爆豪「デタラメな力だ……再生も間に合わねえほどのラッシュってことか……」



これがオールマイトの、プロの本気。
私達が飛び込もうとしている世界は、ここなのだ。

それを改めて思い知らされて、ぐっと息を飲む。



オールマイト「やはり衰えた。全盛期なら五発も打てば十分だったろうに、三百発以上も撃ってしまった。……さてと、敵。お互い早めに決着つけたいね」

死柄木「チートが……!衰えた?嘘だろ……完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を……。全然弱ってないじゃないか!あいつ……俺に嘘教えたのか!?」

オールマイト「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが……出来るのものならしてみろよ!!」



敵に見せた、オールマイトの鋭い目つき。
それは、私の知っているオールマイトからは考えられない程の殺気と気迫を含んでいた。

あまりの気迫に死柄木は後ずさっている。
オールマイトが彼らを倒すのも時間の問題だろう。



轟「……流石だ。俺たちの出る幕はねえみたいだな」

切島「ああ。緑谷!ここは引いた方がいいぜ、もう!返って人質とかにされたらやべぇし!」



私達がその場をオールマイトに任せて去ろうとする中、出久だけはその場に立ち尽くしていた。

一体どうしたのだろう。
先程のオールマイトの攻撃の衝撃で、動けないのだろうか。



名前「出久、切島の言う通りだよ。邪魔になっちゃいけないし、皆の所に戻ろう?」



ぽん、と出久の肩に手を置いて声をかける。

しかし出久は……今にも泣き出しそうな表情で、オールマイトを見ていた。

泣き出しそうと言っても、この顔は感動の類ではない。
不安、恐怖、心配……そんな感情に支配されている表情だった。



名前「……いず、く……?」



明らかに様子がおかしい。

なんだろう……。
なんだか、胸騒ぎがする。

私も彼と同じようにオールマイトへ、そして死柄木さんへと視線を向ける。

死柄木さんは何やら黒霧さんと話をしていて……。


──── その目が再び、殺気に満ちた。



名前「……出久、」



出久の肩をもう一度叩いた、その時。

死柄木さんがオールマイトに向かって走り出した。
死柄木さんに続いて黒霧もオールマイトへと襲いかかっていく。

オールマイトと死柄木さん達の距離はどんどん縮まっていき、オールマイトが拳を握りしめた、その刹那。


──── 目の前から、出久が消えた。


何が起こったのかわからなかった。
出久の代わりにその場に残るのは衝撃波。

風に飲み込まれながらハッとして前を見れば、出久がオールマイトと敵の間に飛び出していくのが目に入った。



名前「出久っ!!!」

緑谷「うらあああーーーーっ!!!オールマイトから、離れろーーーーっ!!!」



まるで空を飛ぶかのように宙に浮いたまま突っ込んでいきながら、拳を振り上げる出久。

出久が狙うのは、黒霧の実態部分のようだ。
一番危険なのは黒霧だと判断したのだろう。

彼の拳が、黒霧に向かったその時。


──── 黒霧を挟んで出久と反対側にいた死柄木さんが、黒霧に自らの腕を突っ込んだ。

その手はワープして、出久の顔面の前に現れる。
その手は出久の顔を掴もうと、大きく開かれていた。

あの手に、触れてはいけない。
本能的にそう感じるのと共に、目の前の光景がスローモーションのようにはっきりと見えた。



名前「 ──── っ、やめてーーーーーーーーっ!!!!!」



ぷつり、と。

何かの糸が、途切れる音がした。

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