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──── ドサッ……。
名前「……う、?」
どこかに落ちた感覚。
しかし痛みはない。
恐る恐る目を開ければ、私の下にあるのは見覚えのあるコスチューム。
名前「……うわあああっ!!ご、ごめんっ!!」
爆豪「っ、重いわアホ!早く退けやクソ女!!」
どうやら勝己が私の下敷きになっていたらしい。
慌てて退けば思い切り舌打ちをされた。
というか、重いって……地味に酷い。
すると、私達の頭上に黒いモヤが現れたかと思うと、そこから飛び出てきたのは鮮やかな赤。
切島「うおおおおっ!!?」
爆豪「ぐえっ!!!」
名前「勝己!!……って、切島!?」
モヤから人が落ちてきて、運悪くその下にいた勝己は再び下敷きになってしまう。
しかも、落ちてきたのは切島だった。
切島「うおっ、風花!?……って、うおおおっ!?爆豪!!?」
爆豪「いいからさっさと退けやクソ髪!!!」
切島「わ、悪い悪い!!」
二度もクッションにされたせいで勝己の機嫌がすこぶる悪い。
慌てて勝己を引っ張り起こす。
……すると、私の背後から複数の足音が聞こえてきた。
「お、ようやくお出ましかぁ?」
「なんだよ、ただの子供じゃねえか」
「馬鹿、年齢で判断すんなって。個性を見ろ、個性を」
名前「……っ!!!」
不敵な笑みを浮かべてこちらに近づいてくるのは、敵だ。
思わず後退れば、私を庇うように立つ背中。
爆豪「おいクソ女。気温爆上げしろや」
名前「う、うん!」
爆豪「それから……手ェ出すんじゃねえぞ!!!」
そう言って勢いよく敵に突っ込んでいき、大爆発をかます勝己。
け、煙で周りが見えない……!
切島「俺も行くぜ爆豪!!」
そんな中突っ込んでいくのは切島である。
彼の個性は硬化だし、こういった対人戦ですごく有利だ。
もちろん勝己もである。
だから問題は、私の方だ。
暴風とか竜巻を発生させたいところだけど、勝己と切島まで巻き込んでしまうから迂闊に使えない。
「お嬢ちゃん、可愛いねえ。こっちにおいで」
名前「っ!誰、が!!!」
「ぐああああっ!!!」
ニヤニヤしながら私に向かってきた敵に、勢いよく回し蹴りを食らわせる。
こういう時は急所を突くに限る!
というわけで、敵の股間を勢いよく蹴りあげた。
続々と寄ってくる敵にも次々と股間蹴りを食らわせる。
爆豪「っ、おいクソ女!手ェ出すなっつったろうが!!」
名前「だって、!やらなきゃ、やられるっ!とりゃああっ!!」
爆豪「っ、クソがっ、死ねぇぇえ!!!」
飛び上がった勝己が私の目の前に着地したかと思うと、私の周りにいた敵を一気に爆破させた。
さすがに強い。
爆豪「クソ女、次手ェ出したらぶっ飛ばす!」
名前「んな理不尽な!!?」
爆豪「嫌なら背中に隠れてろや!!!」
そう言って私の前に立ちはだかり、次々と敵を爆破させていく勝己。
切島も少し遠くで戦っている。
彼の硬化で敵の武器が折れるのが見えた。
この2人、対人戦では強すぎる!
たった10分ほどで、数十人いた敵はあっという間に片付いてしまった。
爆豪「これで全部か、弱えな!」
名前「勝己、切島!大丈夫?怪我とかない!?」
爆豪「誰がするかアホ!!」
切島「俺も大丈夫だぜ!!」
どうやら二人は無事らしい。
良かった……!
名前「本当にごめん、二人の足引っ張った……」
切島「んな事ねえって!風花はここじゃ個性使えねえだろ?それなのにお前、何人かぶっ倒してたじゃねえか」
名前「股間蹴りあげただけだよ。勝己がいなかったら気絶もさせられなかった……」
私の発言に、「あー……」と切島が顔を引き攣らせて憐れみの目で敵を見下ろした。
多分股間を蹴り上げられるというのは、私の想像を絶する程の痛みなのだろう。
しかし彼はすぐに切り替えた。
切島「よし、早くみんなを助けに行こうぜ。俺らがここにいることからしてみんなUSJ内にいるだろうし、攻撃手段少ねえやつが心配だ。それに……」
そう言って切島はぎゅっと拳を握りしめた。
切島「俺らが先走ったせいで13号先生が後手に回った!先生があのモヤ吸っちまえば、こんな事になっていなかったんだ!男として責任取らなきゃ!」
どうやら、先程の自分の行動を悔いているらしい。
しかし勝己は面倒くさそうに舌打ちをした。
爆豪「行きてえんなら一人で行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す!」
名前「!? 勝己、本気なの!?」
切島「この後に及んでそんなガキみてえな……!それにアイツの攻撃は、」
爆豪「っせえ!!あのゲート野郎は敵の出入り口だぞ!いざって時逃げ出さねえよう、元を閉めとくんだよ!モヤの対策もねえわけじゃねえ」
どうやら本気で奴らと戦うつもりのようだ。
思わずゴクリと唾を飲んだ時、勝己の背後でキラリと光った刃物。
その刃は真っ直ぐに勝己の頭を狙って突進してきて……。
名前「っ、勝己!!!」
爆豪「っらァ!!!」
BOOOM!!!
私が声を上げた時には既に爆破が起こっていた。
勝己の左手にはしっかりと敵の頭が握られている。
爆豪「……つうか、俺らに充てられたのがこんな三下なら大概大丈夫だろ」
彼も近づいて来ていた敵にしっかりと気付いていたらしい。
さすがの反応の速さだ。
それを見ていた切島もポカンとして勝己を見ていた。
切島「……つうか、そんな冷静な感じだったっけ、おめえ?もっとこう、『死ね!死ね!死ねーーー!!』って感じじゃなかったか?」
爆豪「俺はいつでも冷静だクソ髪野郎!!」
切島「ああ、そっちだ」
勝己に対するイメージが悪すぎて、こんな時だというのに吹き出してしまう。
まあ、入学してから荒れ狂ってる一面しか見せていないから当然かもしれないけど。
勝己は「けっ!」と言いながら掴んでいた敵を投げ捨てた。
爆豪「じゃあな、行っちまえ!クソ女、てめえはこっちだ!」
名前「ぐええっ!?」
コイツ、また私の襟首掴みやがった!!
潰れたカエルのような声を上げながら、私はジタバタともがく。
それでも勝己の力には敵わず為す術なくズルズルと引きずられていくと、「待て待て!」と切島が声を上げた。
切島「ダチを信じる!男らしいぜ爆豪!ノッたよ、おめーに!!」
そう言って硬化した腕をガチンと打ち鳴らす切島。
さすが切島、言う事が男らしい。
そんな彼を、勝己は暫くじっと見つめていた。
勝己が珍しく怒鳴らない。
……おっと?これはもしや……。
名前「……勝己と切島、友達にn」
──── ゴツッ
名前「いだいいいいいいっ!!?」
殴られた!!唐突に殴られたんだけどなんで!!?
涙目で顔を上げれば、目を吊り上げてる勝己とドン引きしている切島の姿が目に入った。
切島「……爆豪おめー、マジで女子にも容赦ねえのな……」
爆豪「ああ!?女子なんて可愛いもんじゃねえんだよコイツは!ドン〇ーコングか〇ジラみてえなもんだっつの!」
名前「は、はああああっ!!?さ、最低!最低だ勝己!!」
ドンキーコ〇グかゴ〇ラって、さすがにないだろそれは!!
女子っていうか、もはや人間ですらないじゃないか!!
ギャーギャー言い返していれば「うるせえんだよ黙れや!!」といつもの如く怒鳴られて一喝される。
こんな場所でも喧嘩をする私達に、「まあまあまあ!」と切島が割って入ってきた。
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