第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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《 名前 side 》


前後左右斜め、全てを埋め尽くす人。
身動きが取れないほど、廊下は混雑していた。



名前「痛っ……もう、何なのこれ……!」



周りよりも小柄な私は簡単に人混みに飲み込まれてしまう。

人混みにもまれ、足を踏まれ。
逃げたいのに、身動きが取れない。
おまけに轟とも離れてしまった。

どうしよう……!
それに、人に埋もれてしまって息が苦しい!
人に挟まれて窒息死とか、そんな事ある!?

いよいよ焦りが出てき始めた時だった。



爆豪「何埋もれてんだアホ!!!」

名前「か、勝己っ!?んぶっ……」



聞き慣れた罵声が聞こえたかと思うと、ぎゅっと抱き締められる。

物凄い勢いで引き寄せられたため、彼の体に顔を思い切りぶつけた。
地味に痛い。
でもとりあえず、勝己が来てくれたのは有難かった。



爆豪「おい退け邪魔だテメェら!!」

名前「ちょ、勝己!みんな身動き取れないんだって!」

爆豪「テメェは潰されてんじゃねえよクソチビ女!!」

名前「こんな時まで酷い!!」



私を抱きかかえながら周りに怒鳴り散らす勝己を慌てて宥める。

するといつも通り怒鳴られた、酷い。

だけどせめて勝己から離れないように、必死に彼に掴まっていると……。



飯田「うおおおおあああああああっ!!?」

名前「えええ!?ちょ、飯田!?何事!?」



ぐるぐると物凄いスピードで回転しながら私達の頭上を通り、前へ進んでいく飯田の姿。

何やってんのあれ!?なんで浮いてるんだ!?

飯田はそのまま猛スピードで回転しながら進み、ダンッと出口の看板の上に着地した。

そして……。



飯田「皆さん、大丈夫!!ただのマスコミです、何もパニックになることはありません!大丈夫!!」



響き渡った彼の声に、漸く押し合い圧し合いがピタリと止まった。



飯田「ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」



まるで非常口のようなポーズを取りながら、大声で叫ぶ飯田。
彼の人柄が表れていて、こんな状況でも思わず口角が上がった。

するとパトカーのサイレンの音が聞こえ始め、周りからは安堵の声が聞こえ始める。

そして周りは比較的ゆっくりとした動きで各々教室に戻り始め、漸く人混みが散っていった。


飯田の活躍により、パニックは見事に収まったのである。



名前「ああ、苦しかった!ごめんね、勝己。助けてくれてありがとう」

爆豪「気持ち悪ぃからやめろ!!んでもっててテメェは色々巻き込まれすぎなんだよ!!」

名前「いや酷くね!?それに、好きで巻き込まれたわけじゃないよ!」



せっかくお礼を言ったというのにそれを気持ち悪いだなんて、人の誠意をなんだと思ってんだコイツは!
それに人混みに飲まれたのだって、完全に不可抗力なのに!!

ギャーギャーといつもの如く二人で言い合いをしていると、後ろからぎゅっと手を掴まれた。

振り返れば、見覚えのある紅白頭。



轟「っ、風花!大丈夫だったか!?」

名前「わっ!びっくりした、轟じゃん!私は大丈夫だよ、轟は平気?」

轟「ああ。すまねえ、助けられなくて」

名前「ううん、全然!ありがとう」



笑ってお礼を言えば、轟の瞳には安堵の色が浮かんだ。
ポーカーフェイスだと思っていたけど、結構わかりやすいかも。

そんな事を思っていると、後ろから漂ってきたのはどす黒いオーラ。

げっと思って振り返れば、見たことも無いほど目を吊り上げている勝己の姿があった。



名前「か、勝己……?」

爆豪「……テメェ……コイツに、触んな」



鬼のような形相で勝己が睨みつけているのは、私ではなく轟。

いつもの様に声を荒らげるのではなく、ドスの利いた声。
そして今にも両手を爆破しそうな勢いである。

一方で轟は、酷く冷たい目で勝己をじっと見つめていた。
私を挟んでバチバチと火花を散らす二人。


や、やばい。
なんかよくわかんないけど、やばいことだけはわかる。



名前「ごっ、ごめんね轟!教室戻ろう!ほら、勝己も」

爆豪「うるせえクソ女!!!」



私の手を掴む轟の手をそっと離し、笑顔を向ける。

そして勝己の方を振り返れば、物凄い勢いで制服の襟首を掴まれた。



名前「ぐえええっ!!?く、苦しい!ちょ、勝己、締まってる!締まってるって首!!」

爆豪「うるせえ!!戻んぞクソが!!!」

名前「ぐええええええ」



私の悲鳴を聞き入れることもなく、勝己は私を引きずっていく。

じ、自分で歩けるのに!そして苦しい!!
せっかく窒息死から免れたのに今度は締殺!!?
苦しいいいいいいい!!!


ポカンとした表情でこちらを見ている轟が、どんどん遠ざかっていった……。

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