第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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オールマイトの「START!」という合図で個性を発動させ、風に乗る。

同時に、天井近くで念の為雲を作っておく。
それなりに時間がかかるので、早めに作っておく必要があるのだ。


聴覚に頼って、ヒーロー2人のいるであろう方向に進む。

今のところ何も反応が無いということは、あの2人には察知能力はないのかもしれない。
となれば恐らく一階ずつ回ってくるはずだ。


暫くすると、壁を伝うひたひたと特有の足音が聞こえた。
きっとこれは梅雨ちゃんの個性。
蛙だから壁を歩いているのかな。

靴の足音も聞こえてきたから、これはきっと常闇の足音だろう。
2人で一緒に行動しているらしい。



名前「もしもーし。ヒーロー発見。2階のDスペースに2人揃っているみたい」



実はさっき、スペースごとにアルファベットで記号を付けた。
その方が誤解なく伝わるし。

通信機に向かって小声で話しかければ、すぐに声が返ってきた。



切島《了解!すぐ向かう!》

名前「よろしく!」



切島の返事を聞いて通信機から口を遠ざける。
核のある場所は4階だから……2分弱もすれば応援が来るかな。

すると、曲がり角で様子を伺っていた私の視界の端にに黒い影が入る。

よし、今だ!とりあえず奇襲!!
体に風を纏い、両手には2本の鉄の棒を持ち、猛スピードで2人に突っ込んでいく。

強風を纏えば移動なんて一瞬。
2人からすれば、瞬きをして目を開けた瞬間に目の前に私がいる感じだ。



常闇「っ!ダークシャドウ!!」

名前「うおおおおっ!!?マジか!!」



しかし予想外だったのが常闇の個性。
常闇の体から伸びる黒い影が、剣のように振るった鉄の棒を弾き返してしまった。

瞬時に角度を変えて打ち込むが……。



常闇「ダークシャドウ!!」

ダークシャドウ「あいよ!!」

名前「喋れるの!!?」



私の剣は全て防がれてしまう。

なんだこの影、さてはめっちゃ強いな常闇!
それに、あの影のせいで常闇本人に攻撃できない!

咄嗟に距離を取って後ろに下がる。
常闇はというと、先程の謎の影が梅雨ちゃんを掴んで窓に向かって投げようとしている所だった。



名前「何あれすごい!でも行かせないよ!」



遠くに飛ばすにはその前の運動も大きくなる。
どっちに飛ばすか、わかりやすい。

瞬時に私は自分の周りに大雨を降らせてそれを凍らせ、空中で10本程の氷柱を生成する。
うひゃあ、開始早々コスがびしょ濡れだ……。


そして常闇が梅雨ちゃんを投げた瞬間を狙い、梅雨ちゃんの進行方向に向かって銃弾のように氷柱を発射させた。
勿論梅雨ちゃんには当たらないようにコントロールしている。

突然目の前や後ろを横切った氷柱に驚いたのか、梅雨ちゃんはケロッと蛙らしい悲鳴を上げてバランスを崩した。



常闇「蛙水!」

蛙水「ケロッ……!」

名前「おっしゃー!」



落ちた梅雨ちゃんを見逃さず、瞬時に風で自分の体を飛ばす。
そして彼女が壁に張り付く前に、彼女の体をキャッチした。

それと同時に視界の端に映ったのは、鮮やかな赤。
ナイスタイミング!!



名前「切島ーっ!テープよろしく!!」

切島「うおおおおっ!!?」



ちょっと梅雨ちゃんには申し訳なかったけど、切島に向けて梅雨ちゃんを投げる。

もちろん投げた時に梅雨ちゃんが逃げないよう、彼女の体には風を纏わせた。
小さな竜巻みたいな風だ。

切島からすれば、私達を視界に入れるのと同時に梅雨ちゃんが飛んできたことになる。
そのせいか、彼は驚いたような声をあげた。

しかし反応の速さは切島も凄くて、ちゃんと梅雨ちゃんをキャッチしてくれた。



常闇「蛙水!!」

名前「行かせないよ!!」



梅雨ちゃんと切島に向かおうとした常闇の影に向かって立ち塞がり、二刀流で応戦する。

彼の影による攻撃を受け流しながら、どんどん間合いを詰めていく。

先程から見ていれば、常闇本体に攻撃が向かわないようにこの影が彼を守っているように見える。
ということは、常闇が近距離での肉弾戦はあまり得意でないということが考えられる。

風で瞬時に移動はできるので、それを利用して彼との間合いを詰めていく。



蛙水「常闇ちゃん、行って!」

常闇「くっ、すまん!ダークシャドウ!」

ダークシャドウ「あいよ!!」

名前「いだあああっ!?」



梅雨ちゃんの言葉に悔しそうに顔を歪めた常闇は、急いで私達の目の前から去っていく。

捕まえようと咄嗟に手を伸ばしたら、ダークシャドウと呼ばれた影に思い切り頭を叩かれた。

痛い、めっちゃ痛い!
頭は完全に不意打ち、今まで胴体狙ってきてたのに!!


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