第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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オールマイト「それでは、Aコンビ対Dコンビによる屋内対人戦闘訓練!スタート!!!」



オールマイトの合図で、早速訓練が始まった。
胸を不安でドキドキさせながら、幼馴染み2人の様子を見守る。

どうか、何もトラブルが起こらずに終わりますように……!
なんだか嫌な予感がして怖くて、ペンダントをギュッと握った。



耳郎「……名前、大丈夫?具合悪いの?」

名前「えっ?あ、ううん!大丈夫!ただ、ちょっと不安で……」

耳郎「不安?……ああ、あの2人と幼馴染みなんだっけ」

名前「うん……」

耳郎「爆豪だっけ?アイツめっちゃ攻撃的な感じするもんね」



モニターを見れば、一人で核兵器のある部屋を出ていく勝己の姿が映った。
やっぱり勝己はロボ眼鏡君なんて完全に無視で、出久の所に一人で突っ込んでいくつもりだ。

勝己はいつも、出久に対して容赦ない。
今日だってきっとボコボコにするつもりだろう。


2人の……というか主に勝己による一方的な喧嘩を仲裁していたのは、いつも私だった。
勝己が私のことを本気で殴れないことは知っていたから、それを利用していつも出久を庇って前に出ていた。

だけど今、私はあの場にいない。
出久がボロボロになるのなんて見たくなかった。


そして勝己が出久とお茶子の所へ奇襲をかけて……。
間一髪で出久はその攻撃を避けた!



切島「爆豪ズッケぇ!!奇襲なんて男らしくねえ!!」

オールマイト「奇襲も戦略!彼らは今実戦の最中なんだぜ!」

芦戸「緑くんよく避けれたな!」

上鳴「っ!爆豪いった!」

名前「っ、出久!」



出久に向かって突っ込んでいく勝己。

いつもの癖か、咄嗟に画面に向かって手を伸ばしてしまう。
訓練だけど、勝己はきっとそんなこと気にしないでボコボコにするはずだ。

しかし ─── 。



名前「……えっ!?」



殴りかかってきた勝己の腕を掴み、そのまま背負い投げをしてしまった出久。

なにあれ、本当に出久なの!?
確かに右手の大振りは勝己の癖だけど……!


その間にも勝己と出久の攻防は続く。
勝己の爆破に対して出久は個性を使わずに対処している。

出久は私と同じで、誰よりも近くで勝己を見てきたから。
出久は勝己を尊敬していて、そのデータもちゃんとノートに記しているはず。
私の事もノートに書いていたし……。
オタク知識が、まさかここで生きてくるなんて。



名前「……敵には回したくないタイプだね、出久……」



……私の呟きに、オールマイトが少しだけ口角を上げていた事なんて全く気付かなかった。


一旦作戦を立てるためか、その場から離れる出久。

出久を探す勝己は……定点カメラだから何を喋っているかはわからないけど、物凄くイラついているのがわかった。

やっぱり相当堪えてるんだろうな、出久の個性発現が……。
イラついているし、少し焦っているようにも見える。


無線でお茶子と何か話し合っている様子の出久。
そんな彼を勝己が見つけた。
正面戦闘を避けられない状況だ。

そして勝己は右手の籠手についているフックに指を掛けた瞬間、私達と一緒にモニターを見ていたオールマイトが叫んだ。



オールマイト「爆豪少年、ストップだ!殺す気か!!」



会話の内容は聞こえない。
だから勝己の腕に付いている装備が何なのか、私にはわからない。
何故オールマイトが止めたのかわからなかった。

……その瞬間を見るまでは。


勝己がフックを引っ張った瞬間、大きな爆発が出久を襲った。
その威力は凄まじく、私達のいる建物までもが大きく揺れる。

な、何あの威力は!
それにあんなの当たったら、出久の体が……!

勝己のことだ、恐らく出久に当たらないギリギリを攻めたんだと思う。
意外と戦闘中の勝己は冷静なのだ。

でもそうだとしても、これはさすがに……!


爆破による煙が薄れ、ようやく2人の姿が見えるようになる。
どうやら出久は無事なようだ。



切島「……風花、大丈夫か?顔色悪ぃぜ」

名前「……うん、大丈夫。ありがとう」



ジリジリと出久に近付いていく勝己。
正直、もうこれ以上は見たくなかった。

だけど……。
モニターには、今まで見せたことの無い表情を見せる出久。
あれは、覚悟を決めた目だ。



切島「先生止めた方がいいって!爆豪あいつ相当クレイジーだぜ、殺しちまうぜ!?」

オールマイト「……いや、……」



切島の進言で何かを考え込むオールマイト。
少し考えた結果、先程の攻撃をしたら敵チームの負けで強制終了にすると宣言した。

オールマイトからの注意を受け、2人の戦いは接近した肉弾戦になり始める。

しかしそうなると、やはり勝己の方が圧倒的に上だ。



轟「目くらましを兼ねた爆破で軌道変更。そして即座にもう一回……考えるタイプには見えねえが、意外と繊細だな」

八百万「感性を殺しつつ有効打を加えるには左右の爆発力を微調整しなきゃなりませんしね」

上鳴「才能マンだ才能マン。やだやだ」

芦戸「でもこれ、リンチだよ!テープを巻きつければ捕らえたことになるのに!」

常闇「ヒーローの所業に非ず」

上鳴「緑谷もすげえって思ったけどよ。戦闘能力においては爆豪は間違いなく、センスの塊だぜ」



二人のあんな姿はもう見たくない。
すごく辛くて、胸が苦しい。

……だけど。



名前「オールマイト、お願いします!止めないで、続けさせてあげてください!」



私の言葉に、みんなの視線がこちらに向く。



耳郎「でも、アイツらとあんたは幼馴染みなんでしょ?それなのにあんな仕打ち、」

名前「わかってる、私だって見たくない。でも……きっとこれは、出久が前に進むために必要なことだから」

耳郎「必要、って……」



みんなは何のことだかよくわかっていないような顔をした。
だけどオールマイトには伝わったらしく、歯を食いしばりながらも頷いてくれた。

私は、2人から目を逸らしちゃいけない。
ぶつかり合う幼馴染みを、しっかりと見守らないといけないんだ。

出久が、殻を破るために。

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