1
第1種目:50m走
運が良いことに、私と一緒に走るのは勝己だ。
確か勝己は、個性を使わなくても50m走は5秒台だったはず。
速い人と走れば自分も速くなるっていうし、ラッキーだ!
名前「よっしゃ勝己!勝負だ!」
爆豪「うるせえ耳元で騒ぐな!」
名前「あんたこの間私と相撲とってくれなかったからね!あれが運の尽きだったと思いな!」
爆豪「お前まだあれ根に持ってんのかよ……」
相澤『……相撲……?』
あれ、相澤先生が変なものを見るような目でこっちを見てる。
何事だ?
いや、それよりも集中しなければ。
渾身の風を、出してやる!!
「位置について!よーい……」
──── ピッ!!!
名前・爆豪「「うおおおおおーーーーーっ!!!!」」
雄叫びをあげながら、私と勝己は勢いよく飛び出した。
先に前に出たのは私だ。
私がジャンプすれば、あとは風が爆速で勝手に運んでくれる。
あとは周りを巻き込まずにどんどん風を強めるだけ!
しかし勝己も両手を物凄いスピードで爆破させて追い上げてくる。
私の得意分野で負けてたまるかあああっ!!!
そして、結果は……
「3秒57」
「4秒13」
名前「よっしゃーーーっ!!!」
爆豪「クソがああああああっ!!!」
なんと、私の勝ちだった。
まあ、よく考えてみれば私の個性の方がこの種目は有利だろう。
これで負けたら話にならない。
名前「フハハハハハハ!我輩が勝者である!!」
爆豪「どこの10万16歳だ、閣下やめろや腹立つ!!!」
全員『『『何か仲良いなあの二人……』』』
周りからそんな風に思われていたなんて、私達が知る由もない。
爆豪「おいクソ女!!次の種目で勝負だ!!」
名前「え?次って……握力じゃん!無理だって女が男に敵うわけないじゃん!」
爆豪「ハッ、ざまぁ!せいぜい這いつくばってろよカス!」
名前「あんたクソ野郎だな!?」
全員『『『こいつら元気すぎね???』』』
※ 握力はもちろん負けました。
第3種目 : 立ち幅跳び
はい来ました、得意分野です。
まあ勝己も得意分野のはずだけど。
記録無しにならないように、今回は少し加減しないとね。
「スタート!」
名前「よっこらしょーーーっ!!!」
全員『『『よっこらしょ!!?』』』
10m程あった砂場。
そのギリギリで着地出来るように風を調節する。
結構上手くいった!
「へえー、あの子風使いなんだ!しかもめっちゃ可愛くね!?」
「な、可愛いよな!!」
「ミスコンとか余裕なレベルじゃね!?」
待機場所でちょっとざわつかれていたことなんて、露知らず。
るんたるんたとスキップしながら元の場所へと戻った。
それから次は反復横跳び。
反復横跳びはあんまり記録を伸ばせなかった。
だけど次はハンドボール投げ。
こちらは完全に私の得意分野である。
出久と話していた可愛い子が∞という記録を出していたから、私もそれを目指そう!
ボールを持って、白い円の中に入った。
名前「よっしゃ、行くぞー!」
真上じゃなくて横に飛ばさなきゃ。
風穴を開けるスタイルでいこう。
名前「よいしょーーーっ!!」
──── ビュオオオオッ!!!
みんなに風が当たってしまわないよう、ボールの周りだけに風を当てることに意識を集中させる。
予想通り、風に乗ったボールはまっすぐに飛んでいく。
コントロールを誤らない限り、落ちることはないだろう。
ちらりと、計測器を持った先生の方を見た。
相澤「……はい、∞。もういいから風止めろ」
名前「ありがとうございます!」
全員「「「本日二度目の無限大!!?」」」
やっぱり風というのは便利だ。
私の個性、"自然現象"の中でも使い勝手が一番良い。
よし、残りは持久走と上体起こしと長座体前屈か。
上体起こしと長座体前屈は自力で頑張るしかないけど、持久走は50m走の時みたいに風を使えば余裕だ。
風って体力テストだとチートすぎない?
のんびりと待機場所に戻れば、パタパタと誰かが私に駆け寄ってきた。
ふわふわと跳ねる茶髪のショートボブが印象的で………って、この子は!!!
?5「すごいね、かっこいいね!!えっと、名前ちゃん?」
名前「(`//оロо//´)オッフ!」
今朝出久と話していた可愛い子じゃないか!!!
ま、まさかこの子の方から話しかけてくれるなんて!!
ていうか声!めっちゃ声可愛い!
何だこの子最強すぎんか!!?
?5「……ど、どうしたん……?」
あまりの可愛さに悶絶していると、心配そうに顔を除きこまれた。
えっ、まさかの関西弁!?
何それ最高か、ヒーロー科最高ありがとう!!
名前「あっ、ごめんねありがとう可愛いね君!」
?5「へ?」
しまった、思っていたことを全部口に出してしまった!
すると、その女の子は少し頬を赤らめながらもニコリと笑いかけてくれる。
?5「えへへ、ありがとう。名前ちゃんもすっごく可愛いよ!」
名前「何この天使やばい推し確定した」
?5「うん???」
これは、可愛い(語彙力)。
なんだろう、小動物のような可愛さだ。
出久が真っ赤になるのもわかる気がする。
麗日「私、麗日お茶子です!よろしくね」
名前「お茶子!名前も可愛いね!私は風花名前だよ、よろしく!」
お茶子って、この子にぴったりの可愛い名前だ。
ご両親ナイスすぎるだろ。
今日は幸せすぎる、こんなに可愛い子と仲良くなれるなんて!
……おっといけない、今は体力テストに集中しなければ。
私はこの調子ならビリはないはず。
だけど問題は、
飯田「緑谷君はこのままだとまずいぞ……?」
名前「うーん……」
いつの間にか隣にいたロボ眼鏡君が、眉を顰めて遠くを見つめる。
その視線の先には、ボールを持って青い顔をしている出久。
どうやら出久は、未だに記録を伸ばせていないらしい。
みんなはそれぞれで何かしら大記録を叩き出しているし、このままではまずい。
そんな出久を、お茶子が心配そうな顔で見つめていた。
すると会話を聞いていたのか、近くにいた勝己がロボ眼鏡君に乱暴に言葉を返す。
爆豪「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!!」
名前「ちょっと勝己、そんな言い方……!」
しかしロボ眼鏡君は勝己の言葉を聞くと、「何を言っているんだ」とでも言いたげな表情になった。
飯田「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」
爆豪「はぁ?」
名前「え……?」
一体何の話だろう。
出久からは特に何も聞いていないけど……。
どういう意味だろうかとロボ眼鏡君に聞き返そうとした時、出久が大きく振りかぶったので私は言葉を切った。
出久、頑張れ!!!
いい記録が出るように、私はギュッと目を閉じて祈る。
そして ──── 。
<< >>
目次