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……こんな事を考えるほど余裕でいられるのも、多少は自分の個性に自信があるからだ。
私の個性は色んな意味で範囲が広いし、応用も利く。
さっきの勝己のように工夫すればそれなりの結果は出せるだろう。
だから正直、自分のことよりも少し気になっているのは、
名前『……出久、大丈夫かなぁ……』
幼馴染みの出久のことだ。
出久は私達と違い、無個性。
正直、あの入試を乗り越えたのは奇跡に近かったのでは無いかと思う。
成績を見た限り、彼はレスキューポイントのみで受かったみたいだし……。
ちらりと隣に立っている出久を見れば、緊張でガチガチになっていた。
でも出久は頭がいいから、何かしら策は練ってきているはずだ。
あとは彼の緊張を解せればいいんだけど。
名前「いーずくっ!!」
緑谷「うわっ!?名前ちゃんっ……」
バチーンッと勢いよく出久の背中を叩く。
名前「大丈夫だって!私、受験の時までに出久がめちゃくちゃ頑張ってたの知ってるから。いっつもヘトヘトになって学校に来てたじゃん。頑張りが報われたから、出久は今ここにいるんでしょう?だからきっと大丈夫!」
緑谷「……名前ちゃん……ありがとう」
出久は、笑ってくれた。
だけどその笑顔は何だか……貼り付けたような、複雑そうなものだった。
あれ?なんか……かける言葉間違えたかな、私。
一抹の不安が残ったけれど、とりあえず私は急いで最初の種目の場所に移動したのだった。
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