第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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《 耳郎響香 side 》


──── 不思議な女の子に出会った。



?「ポイントなんて、そんなのどうだっていいよ!こんな所に怪我人を放っておけるわけないじゃん。困っている人を助けずに自分の利益のために動くヒーローなんて、私はなりたくない!」



綺麗な碧い瞳が印象的な、その女の子。

ポイントなんてどうでもいい、と。
今後の人生を左右するであろうこの試験で、迷うこともなくそう言い切った。


──── 「私は、逃げない」と。
「貴方を守る」と。

巨大な敵が現れても果敢に立ち向かう姿に、ウチは息を飲んだ。


おまけにその子の個性はとんでもなく強かった。

ウチを背負ったまま、巨大な仮装敵をたった一人で吹っ飛ばせる程の竜巻を発生させる個性。
さっきもウチの自由を奪っていた瓦礫を風で動かしてくれたし、きっと風使いなんだと思う。


そして何よりも、ロボットの破片が降ってきた時。
自分よりもウチの身を案じて、ウチを庇うように覆い被さってきた。

自分を犠牲にするなんて、簡単に出来ることじゃない。


結果的には、黒髪の男子に助けられたわけだけど……。

名前も何も知らない、赤の他人の女の子なのに。



?2「……アイツ、かっけぇな」

耳郎「……うん」



凄く、カッコイイと思った。



耳郎「……あんたも、助けてくれてありがとう」

?2「いや、俺の個性は硬化だからよ。あのくらいなんて事ねえぜ!……それより、」



そう言って、その男子はあの女の子が走って行った方向をチラリと見た。



?2「……俺もよ、アイツの漢気に感動しちまったんだ!」



そう言ってガンッと自分の拳同士を打ち合わせるその男子。



?2「……実は、アイツが竜巻発生させた時くらいから見ていてよ。立ち向かっていくアイツの漢気に痺れちまったんだ。真っ直ぐなアイツの目によ」



漢気……か。
確かにあの女の子は、可愛らしい見た目からは想像がつかないくらいの漢気があった。

凄くかっこよかった。
ヒーローの卵なんかじゃなくて、本当にヒーローなんじゃないかと錯覚してしまうくらいに。

ウチも、あんな風に……。



?「 ──── おーい、お待たせー!」



そんな声に顔を上げれば、あの女の子がリカバリーガールを連れてこちらへ向かって来るところだった。



?「じゃあ、後はお願いします」

リカバリーガール「あいよ」

?「じゃ、私はこれで。お大事にね。あなたも、助けてくれてありがとう」

?2「お、おう」

耳郎「えっ?あ、ちょっと……!」



ウチにニコリと笑いかけ、男子に向かって丁寧に頭を下げてから、くるりと背を向けて足早に走って行ってしまう女の子。

慌てて引き止めようとするが、リカバリーガールの治療が始まってしまい身動きが取れなくなる。



リカバリーガール「はい、終わったよ」

耳郎「……ありがとうございます」



……行ってしまった。
ちゃんとお礼もできていないし、名前も聞けなかった。

思わずぎゅっと拳を握りしめる。



?2「ヒーローは名乗らねえってか。痺れるぜ……!」



その男子も目を輝かせて、去っていった女の子の背中を見ていた。

去っていった背中は誰よりも凛々しかった。


……きっと、あの子は受かる。
あれだけの素質だ、受からないはずがない。

だからウチも絶対に受かって、もう一度あの子に会いたい。
あの子にちゃんと、お礼を言いたい。


残りの筆記試験に向けて、ウチは己を奮い立たせた……。

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