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……が、突然後ろから物凄い力で引っ張られ、名前の体は地面に投げ出された。
名前「ふぎゃっ!?」
柔道を習っているのが幸いして受け身は取れたので、痛いが怪我はない。
そして目を開けて飛び込んできたのは、爆豪と緑谷の影響で自分も憧れていた人の背中だった。
オールマイト「もう大丈夫だ!何故って?私がきた!!!」
名前「オール…マイト…?」
……うそ。
こんな、グッドタイミングで?
こんな奇跡みたいなことって、ある……?
オールマイト「プロはいつだって命懸け!!! DETROIT SMAAAAAASH!!!! 」
オールマイトは緑谷と爆豪を片手で持ち、もう片方の手で必殺技のデトロイトスマッシュを打つ。
──── ゴオォォォォッ
オールマイトが名前を遠くの方へ放っていたのが幸いだったが、その場一帯には物凄い風が巻き起こった。
名前「うわあああっ……!!!」
必死に電柱に掴まって飛ばされないように踏ん張る。
そしてしばらくすると、風は収まった。
……その代わり、雨が降り出す。
さっきの攻撃で、上昇気流が発生したのだ。
名前「……すご、い……」
ポツリと、名前は呟く。
初めて、No.1ヒーローの実力を目の当たりにした瞬間だった。
その刹那、ワーッ!!と大きな歓声が上がる。
そして目の前には、逞しい右腕を力強く突き上げる、オールマイトがいた……。
──── その後、名前と緑谷はこっぴどくヒーロー達に怒られた。
「君たちが危険を冒す必要は無かったんだ!!」
勝己が死んでたかもしれないんですよ、と食ってかかりたかったが、聞いてもらえるはずもないので大人しく返事をしておく。
罵倒の嵐をくらった後、名前はガシッと力強い腕に肩を掴まれた。
今度はなんだ、とややうんざりしながら名前は振り返る。
オールマイト「やあ少女!!!!」
名前「うわああっ!!おおお、オールマイト!?」
まさかいつもテレビで見ている人物に話しかけられるとは思わず、変な声が出る。
オールマイト「ダメじゃないか、あんな風に飛び出していったら!」
名前「すみませんでした。……でもさっきそれは耳にタコが出来るくらい聞きました」
オールマイト「おっとそうだったな。……だがその勇敢な姿勢!!今はまだ危なっかしいが、嫌いじゃないよ!!」
名前「あ、ど、どうも…」
オールマイトはグッジョブ!!という顔をする。
手は勿論、GJポーズだ。
オールマイト「……おっと、そうだ。はいこれ、卵とか」
名前「えっ!? あ、ありがとうございます……」
緑谷達を掴んでいた方の彼の腕に何かがぶら下がっていたと思ったら、レジ袋だったのだ。
オールマイトがこれを持つと、異様に袋が小さく見える。
しかし、
名前「……あれ? 何でオールマイトがこれを?」
オールマイト「ギクゥッ」
名前が袋を預けたのはガリガリの金髪のおじさんだったはず……。
なぜオールマイトがこれを持っているのだろうか。
オールマイト「……あ、ああ、いや、その……わ、私はね、君が袋を預けたおじさんと友人なんだ。彼は具合が悪いらしくてね、私にこれを預けて帰ってしまったのだよ」
名前「は、はぁ……」
なんだかいろいろ疑問が残るが、気にしても仕方ないだろう。
名前「……いろいろすみませんでした。本当にありがとうござい、ま……」
……あれ?
ぐにゃり、と名前の視界は歪んだ。
そのまま意識が遠のいてゆく。
オールマイト「……少女!? 大丈夫か少女!?」
驚いたようなオールマイトの声を最後に、名前は完全に意識を失った……。
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