第一章 中学時代〜USJ襲撃事件 | ナノ


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名前「─── いやー、快勝快勝!!」



あれから卵争奪戦を終えた名前は、1人帰路についていた。

ご機嫌でるんたるんたとスキップまでしているのは、勿論卵を格安でゲットできたからでもあるのだが、



名前「まさかカツオのたたきが半額で買えるなんて!!」



名前の好物、刺身が値引きされていたのである。

それも、この時間帯で半額。
名前の目にとまらないはずがない。

刺身なんて滅多に食べれないし、今日はちょっぴり贅沢だ。

さっきまでは節約を心がけていたのに、やはり大好物の安売りには敵わない。
自分だけ好物を食べるのは気が引けたため、弟たちが大好きなエビチリも買ってしまった。



名前「おっと危ない!卵あるの忘れてた」



卵の存在に気づき、スキップをやめる名前。

……足を止めたため、必然的に向かいの通りの人だかりに目がいった。
ザワザワと騒がしく、野次馬が集まっている。



名前「ん?なんだ?」



有名人でも来ているのだろうか?

……だが、そんな呑気な雰囲気ではない。



名前「……煙……?」



スンスン、と匂いを嗅げば何だか焦げ臭い。
火事でもあったのか?

名前も人並みに野次馬根性はある。
つい、人だかりの方へ行った。

……だが既にたくさんの人が集まっているため、自分の身長では見えない。



名前「……あの、何があったんですか?」



名前は近くにいた金髪の……何だか目付きが悪くてガリガリの男に声をかける。

その人は何故か、ギクリと肩を震わせた。



名前「敵ですか?」

?「……あ、ああ。子供が……!」

名前「子供?」



名前はぴょんぴょんと飛び跳ねる。
ジャンプ力はそれなりにある方だ。

ジャンプして……

───── 背筋が凍りついた。



「バカヤローーー!止まれ!止まれ!!」



敵に向かって飛び出して行ったのは、見覚えのあるモサモサ頭。



名前「 ──── 出久っっっ!!!」



それは、紛れもなく幼馴染みの後ろ姿だった。

どうして、出久が。
私がさっき、一緒に帰っていればこんなことには……!


ヒーローは何人もいるが、敵を攻撃していない。
きっと個性上相性が悪いのだろう、みんな避難誘導や火消しに徹している。

そんな中に、無個性の出久が飛び出していったら?
ヒーローは、出久を助けてくれる?


キラリと光る、首元のアネモネ。

──── 答えを出すよりも早く、体は動いていた。



名前「ちょっとおじさん、これお願い!卵割らないでくださいね!!」

?「!? おい、少女!やめなさい!何を、」



金髪の男が止めるのも虚しく、名前は人混みを掻き分けて進む。



名前「どいて!どいてください!!もう、どいてって言ってんでしょーが!!!」



……その時。

敵が、緑谷に向かって手を振り上げるのが見えた。



名前「っ、やめてーーーっっっ!!!」



名前は咄嗟に個性を発生させる。
自分が緑谷のもとへ最速で行けるよう、自分を運ぶ突風であった。

自分の体に風をまとい、周りに突風による被害が及ばないよう最小限の力で。

──── 風と共に、飛んだ。



「待ちなさい、君!!」



ヒーローが声を上げた時、すでに名前はそこにいない。

低空飛行で、飛んだ。


間に合え………

間に合え!!!

間に合えっっっ!!!!!



名前「よっこらしょーーーー!!!!」



地面を蹴れば、さらにスピードが上がる。



緑谷「っ!? 名前ちゃ、」



緑谷が名前を認識するよりも早く、名前は彼を抱きかかえ、敵の死角になる所へ移動した。

その瞬間、ドガッという鈍い音がする。

……振り返れば、つい1秒前に緑谷がいた場所が大きく凹んでいた。



緑谷「名前ちゃん!なんでここに、」

名前「私の野次馬根性舐めないでよね!それよりここから逃げるよ!もうひとっ走りするから掴まって!」

緑谷「ダ、ダメだ!! かっちゃんが!!」

名前「……えっ、勝己……?」



名前は振り返って敵を見る。


──── 自分の目を、疑った。

敵の中に、爆豪がいた。


頭の中が、真っ白になる。



緑谷「かっちゃん!!!」



だから、動き出すのは緑谷の方が早かった。

緑谷が敵に飛びかかり、爆豪を取り巻くネバネバした敵を必死に取り除く。



名前「勝己っ!!!」



悲鳴に近い声を上げて、名前は緑谷に加勢した。



爆豪「……ば、かっ……来るな、名前っ……」

名前「嫌だ嫌だ!! 死なないで、勝己!! 嫌だ!勝己!!」



今にも泣き出しそうな表情で敵を取り除く名前。

彼女の笑顔が崩れたのはいつ以来だろう。



爆豪「くっ、そが……デク…なんでてめぇが……」

緑谷「わかんないけど!!君が、助けを求める顔してた」



緑谷は、笑っていた。
泣きそうな名前とは対照的だった。

すると再び敵が手を振りかざし、その矛先は名前へ。



爆豪「や、めろ……っ!!」

名前「……っ!!!」



名前は思わず目を瞑る。

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