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名前「─── いやー、快勝快勝!!」
あれから卵争奪戦を終えた名前は、1人帰路についていた。
ご機嫌でるんたるんたとスキップまでしているのは、勿論卵を格安でゲットできたからでもあるのだが、
名前「まさかカツオのたたきが半額で買えるなんて!!」
名前の好物、刺身が値引きされていたのである。
それも、この時間帯で半額。
名前の目にとまらないはずがない。
刺身なんて滅多に食べれないし、今日はちょっぴり贅沢だ。
さっきまでは節約を心がけていたのに、やはり大好物の安売りには敵わない。
自分だけ好物を食べるのは気が引けたため、弟たちが大好きなエビチリも買ってしまった。
名前「おっと危ない!卵あるの忘れてた」
卵の存在に気づき、スキップをやめる名前。
……足を止めたため、必然的に向かいの通りの人だかりに目がいった。
ザワザワと騒がしく、野次馬が集まっている。
名前「ん?なんだ?」
有名人でも来ているのだろうか?
……だが、そんな呑気な雰囲気ではない。
名前「……煙……?」
スンスン、と匂いを嗅げば何だか焦げ臭い。
火事でもあったのか?
名前も人並みに野次馬根性はある。
つい、人だかりの方へ行った。
……だが既にたくさんの人が集まっているため、自分の身長では見えない。
名前「……あの、何があったんですか?」
名前は近くにいた金髪の……何だか目付きが悪くてガリガリの男に声をかける。
その人は何故か、ギクリと肩を震わせた。
名前「敵ですか?」
?「……あ、ああ。子供が……!」
名前「子供?」
名前はぴょんぴょんと飛び跳ねる。
ジャンプ力はそれなりにある方だ。
ジャンプして……
───── 背筋が凍りついた。
「バカヤローーー!止まれ!止まれ!!」
敵に向かって飛び出して行ったのは、見覚えのあるモサモサ頭。
名前「 ──── 出久っっっ!!!」
それは、紛れもなく幼馴染みの後ろ姿だった。
どうして、出久が。
私がさっき、一緒に帰っていればこんなことには……!
ヒーローは何人もいるが、敵を攻撃していない。
きっと個性上相性が悪いのだろう、みんな避難誘導や火消しに徹している。
そんな中に、無個性の出久が飛び出していったら?
ヒーローは、出久を助けてくれる?
キラリと光る、首元のアネモネ。
──── 答えを出すよりも早く、体は動いていた。
名前「ちょっとおじさん、これお願い!卵割らないでくださいね!!」
?「!? おい、少女!やめなさい!何を、」
金髪の男が止めるのも虚しく、名前は人混みを掻き分けて進む。
名前「どいて!どいてください!!もう、どいてって言ってんでしょーが!!!」
……その時。
敵が、緑谷に向かって手を振り上げるのが見えた。
名前「っ、やめてーーーっっっ!!!」
名前は咄嗟に個性を発生させる。
自分が緑谷のもとへ最速で行けるよう、自分を運ぶ突風であった。
自分の体に風をまとい、周りに突風による被害が及ばないよう最小限の力で。
──── 風と共に、飛んだ。
「待ちなさい、君!!」
ヒーローが声を上げた時、すでに名前はそこにいない。
低空飛行で、飛んだ。
間に合え………
間に合え!!!
間に合えっっっ!!!!!
名前「よっこらしょーーーー!!!!」
地面を蹴れば、さらにスピードが上がる。
緑谷「っ!? 名前ちゃ、」
緑谷が名前を認識するよりも早く、名前は彼を抱きかかえ、敵の死角になる所へ移動した。
その瞬間、ドガッという鈍い音がする。
……振り返れば、つい1秒前に緑谷がいた場所が大きく凹んでいた。
緑谷「名前ちゃん!なんでここに、」
名前「私の野次馬根性舐めないでよね!それよりここから逃げるよ!もうひとっ走りするから掴まって!」
緑谷「ダ、ダメだ!! かっちゃんが!!」
名前「……えっ、勝己……?」
名前は振り返って敵を見る。
──── 自分の目を、疑った。
敵の中に、爆豪がいた。
頭の中が、真っ白になる。
緑谷「かっちゃん!!!」
だから、動き出すのは緑谷の方が早かった。
緑谷が敵に飛びかかり、爆豪を取り巻くネバネバした敵を必死に取り除く。
名前「勝己っ!!!」
悲鳴に近い声を上げて、名前は緑谷に加勢した。
爆豪「……ば、かっ……来るな、名前っ……」
名前「嫌だ嫌だ!! 死なないで、勝己!! 嫌だ!勝己!!」
今にも泣き出しそうな表情で敵を取り除く名前。
彼女の笑顔が崩れたのはいつ以来だろう。
爆豪「くっ、そが……デク…なんでてめぇが……」
緑谷「わかんないけど!!君が、助けを求める顔してた」
緑谷は、笑っていた。
泣きそうな名前とは対照的だった。
すると再び敵が手を振りかざし、その矛先は名前へ。
爆豪「や、めろ……っ!!」
名前「……っ!!!」
名前は思わず目を瞑る。
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