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《原田 side 》
──── 目の前には、手足を縛られ、着物を半分脱がされて横たわる名前。
原田「名前っ!!!」
俺は急いで駆け寄り、まずは名前の口を塞いでいた布を取る。
すると口の中からも丸め込まれた布が出てきた。
名前「……うえぇっ、ぺっ、ぺっ、……」
名前はしかめっ面をして布を吐き出した。
原田「名前!大丈夫か!?怪我は!?」
名前「う、へへ……全然、平気……」
そう言って名前はニカッと笑った。
だがその笑顔は、とても弱々しい。
原田「今、縄を解いてやるからな」
名前「あ、ありがとう……うえぇ、口の中が変だ」
名前の手の縄を解いていると、「左之っ!!」と声がする。
どうやら新八と平助も来てくれたようだ。
原田「新八、平助!その男を連行してくれ!」
藤堂「あいよ!」
新八「名前ちゃんは!?」
名前「聞いて新八っつぁん、私こいつの共謀者に吉田○保里もびっくりのタックルしてやったわ」
新八「無事なのか!よかった!」
藤堂「思ったよりも元気みたいで安心したぜ。……ほら、立て!行くぞ!」
新八と平助は男を起こすと、無理やり引っ張って先に蔵を出て行く。
一方俺は、やっとのことで名前の手の縄を解き終えたところだった。
かなり厳重に縛ってあったんだ。
名前の華奢で白い腕には、くっきりと縄の跡が残ってしまっている。
なんっつー酷いことを……!!
名前「ああ、痛かった!ずっと同じ体勢だったから体がバキバキだよ……」
俺が足の縄を解き始めると、ううーん、と伸びをする名前。
なんでこいつは、こんなにピンピンしてるんだ?
……いや、わかっている。
これが、強がりなんだってことくらい。
俺に心配かけまいと、元気に振る舞っていることくらい。
俺が、わかってやらなくてどうする。
足の縄を解き終えた瞬間、俺は名前を力いっぱい抱きしめた。
「ふぎゃっ」とか「左之さんルート来た」とか、よくわからない言葉が聞こえたが、そんなの気にしていられない。
原田「……遅くなって、悪かった……」
細い体を抱き締めれば、とてつもない罪悪感に襲われる。
……こんな、小さい体で。
お前は、ずっと1人で戦っていたのか。
名前「……え、へへ。左之さん、私頑張ったんだよ」
原田「……ああ」
名前「……気持ち悪かったけど、耐えたんだよ、」
原田「……ああ」
名前「……泣かなかったよ。あんなやつに、私の涙、見せなかったよ、」
原田「……ああ」
名前「……怖かった、よぉ……!!」
うわああああっ、と名前は声を上げて子供のように泣き出した。
今までどんなに怒られても、どんなに稽古でボロボロになっても決して涙を見せなかった名前が、泣いている。
どれほど怖かっただろう。
どれほど苦しかっただろう。
……そして俺は、なんて無力なんだろう。
此奴をひたすら抱きしめてやることしか、俺にはできないのだ。
名前「う、ひっく………さ、の、さん……」
原田「ん?どうした?」
名前「……見つけてくれて、ありがとう……」
名前の顔を見れば、名前は泣き腫らした顔でふわりと笑う。
その笑顔を見た瞬間、ドクリと心臓が飛び跳ねた。
──── そして名前は、フッ…と力が抜けたように俺の胸に倒れ込んだ。
原田「……っ!?名前?おい、名前!!大丈夫か!?」
俺は焦って、ぐったりとした名前の体を揺さぶる。
……すると、
名前「……Zzz……Zzz……」
原田「…………は?」
……寝てる……のか?
原田「なんだよ……はぁ……」
心配させやがって、全く……。
きっと、安心したせいで一気に疲労が襲ってきたのだろう。
当然っちゃあ当然だ。
そして俺は名前を抱きかかえて蔵を出た……。
千鶴「 ────っ!!名前っ、原田さん!!」
名前の部屋まで行くと、千鶴が待っていた。
あれだけの騒ぎを起こしたのだ、恐らく部屋に戻るように言われていたのだろう。
俺に抱きかかえられてぐったりとしている名前を見て、千鶴はサッと青ざめた。
原田「大丈夫だ、眠っているだけだ。悪いが千鶴、名前の布団を敷いてやってくれねえか」
千鶴「はい!」
千鶴が大慌てで敷いた布団に、俺は名前を寝かせる。
その後千鶴は水と包帯を取ってくると言って部屋を出て行った。
部屋に残された俺は、グーグーと眠る名前を見る。
……こんなに軽かったんだな、お前は。
ふと俺は、懐に入れていた金平糖の存在を思い出し、それを名前の枕元に置いた。
そして名前の頭を撫でながら、ようやく一息ついたのだった……。
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