桜恋録 | ナノ


3


……長い長い回想でしたが、こうして斎藤さんによる授業が始まったということなのです。


これは1週間前の出来事だったんだけど、そこから毎日斎藤さんによる授業があった。

斎藤さんは巡察から帰ってきて私に稽古を付け、その後にこのお勉強。
夕餉の時には授業は一旦中断されるが、夕餉を終えて風呂に入り終わった後、就寝時間ギリギリまで続く。
そしてこれをほぼ毎日だ。

タフすぎるんだってば斎藤さんは!!!
なんなのこの人!!どんな体してんの!?

そして、稽古でボロボロにされた後で受ける授業が身に入るはずもなく。



──── バチーンッ!!



名前「いでええええええええっ!!!」



……そして、冒頭に至るというわけだ。

私が眠る度に、斎藤さんは物差しみたいな木の板で私の手や肩を叩いてくる。
手加減はしてくれているんだろうけど、これが痛いのなんのって。



斎藤「……よし。では次だ、昨日の復習だ。徳川家歴代将軍の名を述べろ」

名前「いてて……え?徳川家の将軍ですか」



参った、さっぱり覚えてない。
半分眠りながらやってたからな……。



名前「ええっと、歴代将軍ですね!はい、言います!はーい、いきますよ!ええっと、」

斎藤「早くしろ」

名前「は、はい。徳川家康……家康………家、康………」

斎藤「……あんたの中に家康公は何人いるんだ」

名前「1人です………」



ええい、仕方ない。
こうなったら、最後の手段。

──── 勘で穴埋め作戦!!!



名前「えぇっと……徳川家康……家太郎、家之助、家三郎、家二郎、家五郎、家助、」

斎藤「ふざけているのか」



──── バチーンッ!!



名前「いだああああああ!!!」



くっそう、掠らなかったか。
『家』付けとけば当たるかと思ったのに。

仕方ない。
私は素直に、「すみません忘れました」と申し出た。



斎藤「それなら初めからそう言えば良いのだ」



そう言って斎藤さんは小さくため息をついた。

……なんかもう、こんなに出来が悪くてごめんなさい。



斎藤「…いいか、今度こそは覚えろ。徳川家歴代将軍 家康公、秀忠公、家光公、家綱公、綱吉公、家n」

名前「いやああああああああああああ」



──── 私の悲鳴が屯所中に木霊した……。

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