桜恋録 | ナノ


4



──── ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ……



原田「……なぁ、名前」

名前「へい(プルプル)」

原田「……お前のいた、元の世界によ、……」

名前「うん?(プルプル)」



珍しく、歯切れの悪い左之さん。
だけど私は小松菜と格闘中のため、左之さんの顔を見ることができない。



原田「……思い人とか、いたのか?」


名前「えっ」



──── ザシュッ…



名前「うぎゃああっ!!」



予想だにしなかった質問に驚いて手を滑らせてしまい、誤って人差し指を切ってしまった。

結構深く切ってしまったようで、まな板が赤く染まっていく……。



原田「おい、大丈夫か!?」

名前「あ、あはは、切っちゃった、!!?」



ぐいっと手をつかまれたかと思えば、切ってしまった人差し指は左之さんの口元へ。
そしてそのまま傷口をちゅうっと吸われる。

ピリッと指先に痛みが走った。



名前「ひいいっ!?さささ、左之さ、!?」


原田「ん?」



うわあああーーーーーっ!!?

え、え、エロい!
めちゃくちゃベタな展開なのに左之さんがやるとめっちゃエロい!!


そして左之さんルートきたーーーっ!!



原田「……よし、止まったな。大丈夫か?」

名前「だ、だ、大丈夫、うん、うん」

原田「……ん?どうした?顔赤くねぇか?」

名前「ななな、何でもないっ!」



え、無自覚!?
あの破壊力を無自覚!?

左之さん実は天然タラシ説ある!?



……色々ハプニングはあったけど何とか他の具材も切り終え、鍋で味噌を溶かし具材を入れる。
あとは煮込めば完成だ。

……あれ、そういやさっき、左之さんに何か聞かれなかったっけ?



名前「……え、えっと……何の話してたっけ?」

原田「……いや、何でもねえ。忘れてくれ」

名前「そ、そっか」



忘れてくれって言われても、そもそも覚えてないんだけど……。

なんだっけ?
なんかモヤモヤするなあ……。

ま、思い出したときでいいか!



原田「……そろそろいいんじゃねえか?」

名前「よっしゃ!」

原田「味見してみるか」

名前「ん」



私と左之さんは小皿に味噌汁を取り味見をしてみる。



名前「……あれ?意外と美味くね?」

原田「……ああ。美味ぇな」



……まじか、できちゃった。



名前「やったあ!ありがとう左之さん!よかった、作った料理が緑色になる呪いにかかってなかった!」

原田「いやどんな呪いだよ……でも、やりゃあできるじゃねえか」

名前「えへへへへへへへへ」



左之さんが頭をなでなでしてくれたので、心も体も正直な私は思い切り顔が緩む。

おまけに金平糖も約束通りちゃんとくれたし、もう左之さん大好き。

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