桜恋録 | ナノ


3


突然目の前に、十数人の男達が立ちはだかった。



名前「……ん? すみませーん、ちょっとそこ通してもらえますか?」

「ハッ、新選組にも随分と生意気なガキがいたもんだ……」

名前「え……?」



よく見るとそいつらは全員刀を構えていて、その鋭い刃先は私たちに向いていた。

……え、何コレ?

つか、この人たちってもしかして……。
不逞浪士ってやつ?

あれ、これヤバくね?結構ヤバくね?
(デジャブ)


ふと気づけば新八っつぁん達もみんな刀を構えている。



名前「え、ちょ……あ、危ないよ、逃げようよ新八っつぁん……みんなもラブアンドピースでいこうよ……」

永倉「……名前ちゃん、危ねぇから離れててくれねぇか」



どうやら不逞浪士を前にした新選組に、『逃げる』という選択肢はないらしい。

あたりまえか、こいつらを取り締まるために新選組はいるんだ。
平和そうに見える町でも、今は平和な時代じゃないんだ。

ここで足を引っ張ってはいけないと思い、さすがの私も大人しくみんなから離れる。



「……俺達の居場所を奪いやがって……」

「貴様らのような田舎者の百姓集団が、勝手にこの町をうろちょろするな!!」

「「「新選組、覚悟!!!」」」



そう言って不逞浪士達は一斉に斬りかかってきた!!!!!



名前「ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ」



私は驚いて近くの建物の影に隠れる。

キン!キィィン!!と刃物がぶつかる音が鳴り響く。
しかし実力差は歴然で、あっという間に不逞浪士達は取り押さえられた。



名前「す、すごい……」



初めて見た、新八っつぁん達が戦っている光景。
いつもぐうたらお酒を呑んで、二日酔いで寝てる人とはまるで別人だった。

……この人たちは、いつも死と隣り合わせなんだ。
そういう時代なんだ。

今になって湧いたその実感を、噛み締めた時だった。


……ガシッ と誰かに後ろから肩を掴まれた。



名前「!? だ、誰、」

「……動けば、斬る」



──── チャキ……


首筋に、固くて冷たい物が当たった。



永倉「!? 名前ちゃん!!」

「貴様らも動けば、このガキの首を掻っ切る」

永倉「くっ……」



首を掻っ切る!?
冗談じゃない、首だけになるなんて!!

新八っつぁん達も、私が人質に取られているせいで迂闊に動けないようだ。

どうやら不逞浪士の1人が私に目をつけていたらしく、他の仲間が戦っている間に私の背後に回っていたらしい。
なんて卑怯な奴!!!



「……くくく、思わぬ収穫があったな…こいつぁ、高く売れるはず……」

名前「!?」

永倉「おい、やめろ!!その子には手を出すな!!」



売る!? 私を!? 人身売買!?



名前「いっ、嫌だっ!離してっ、」

「動くなっつってんだろーが、掻っ切るぞ」

名前「ぎゃっ……」



刀がさっきよりも首に食い込んできた。

……やばい、こいつ本気だ。

ツツ……と何かが私の首を伝う。
きっと血が出てるんだろう。


痛い、苦しい。

だけど、新八っつぁん達が少しでも近づけば、私の首は飛んでいくだろう。
新八っつぁん達がいる場所からここまで、少し距離があるのだ。


……こうなったら。

──── 自分でやるしかねぇ!!!!


私は咄嗟に、刀を持つ男の手にガブリと思い切り噛み付いた。



「ぎゃあああ!!」



一瞬だけ私を掴む男の力が緩む。
その隙に私は体の向きを変え、渾身の蹴りを繰り出した。

──── 男の股間に向けて。


ド ゴ ォ ッ !!!



「 ────っっっ!!?」



男は声にならない悲鳴を上げてその場に倒れる。
見れば、そいつは泡を吹いて気を失っていた。

その瞬間、



永倉「確保しろ!!」

「は!!」



とみんなの声が聞こえ、男は取り押さえられた。



永倉「名前ちゃん!大丈夫か!?」

名前「うわーーーん新八っつぁーーーん!!!(涙)」

永倉「傷見せてみろ」



新八っつぁんが来てくれて、手拭いで止血をしてくれる。



永倉「……すまねぇ……守ってやれなかった……」

名前「っ!? な、何で新八っつぁんが謝るの!?」



見たこともないくらい萎れて謝ってくる新八っつぁんに、私はすごく慌てた。

すると、新八っつぁんがぎゅうっと私を抱きしめる。
……ものすごい力だったので、「ぐぇっ」と変な声が出た。

しかし、この状況は……



永倉「本当にすまなかった……これからは、必ず守るからな……!」



まさかの新八っつぁんルートきたーーー!!(´ ^p^)ピギャーーーーー!!!


……だけど。



名前「……く、苦しっ……新八っつぁん苦しい!潰れる潰れる!!」

永倉「お、おお!?すまねぇ!」



力の加減が全くわかってないらしく、絞め殺されそうになった。
私がもがけば、新八っつぁんは慌てて私を離してくれる。


……色気の欠片もない雰囲気だったけれども。

初めて新八っつぁんをかっこいいと思った日だった。←


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