桜恋録 | ナノ


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──── 私がこの世界にトリップしてきて1ヶ月が経とうとしていた。

そして早くも私の中には、とある不満が生まれていた (別に早くはないか、もう1ヶ月経つし)。



名前「………外行きたい」



もちろん庭に行ったりとか、稽古のために壬生寺に連れて行かれたりとかはよくある。

そうではなく、屯所の外 ──── 町に行きたいのだ。


最初で最後に行ったのは、左之さんと着物を買いに行った時だ。

最近はみんなとすごく仲良くなったおかげで、みんな巡察終わった後とかに私の部屋に来てお話してくれるようになったんだけど、やっぱり外に出たい。

何しろ私はインドア派ではなく、根っからのアウトドア派だ。
毎日変わりもしない風景を見るのが退屈で仕方ないのである。



じゃあ出かければいいじゃんと思うかもしれないけど、私が外に行くのは許可制なのだ。

しかも何が辛いって、その許可というのは近藤さんではなく土方さんに出してもらわなきゃいけないってことだ。

今まで5回くらい交渉に行ったんだけど、全て即却下。
多分、私が問題ばっかり起こしてしょっちゅう土方さんに怒られてるからだろう。


ついさっきも、「暇あああああああああああああああああああああああ」と何秒続けて伸ばせるかという大会を1人で部屋の中で開催していたところ、



土方「うるせぇ!!!!!!」



と2つ隣の部屋の土方さんに怒られて、1人風呂掃除の刑に処せられた。

風呂掃除はいつも1人で千鶴がやっててくれてたみたいで、改めて千鶴のすごさを知った。
1回掃除しただけで、腰が痛いことなんのなんの。

今度千鶴が1人でやってたら手伝ってあげようと誓った。


……なんだか話が逸れちゃったけど、とにかく私は外に行きたいんだ。


そこで私は思いついた。
──── こっそり屯所を抜け出して出かけちゃおう! と。


この1ヶ月で、巡察の順番とか覚えたし、どの時間帯にみんながどこで何をしているのかも大体わかった。

そして ──── 今が外に出かける絶好のチャンスだ!!!


よっしゃ抜け出したれ! と私は忍び足で部屋から出た。
そのまま土方さんの部屋を通り過ぎたところで、私は猛スピードでダッシュして屯所から出る。



……出れちゃった。



名前「外だ……!!!」



天は私に味方してくれた!!!

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