桜恋録 | ナノ


5


──── 来た時と同じように、私たちは手を繋いで帰り道を歩く。

……でも、来た時と違うことが一つだけ。
私と左之さんの関係が "恋人" に変わったのだ。



名前「……夢みたい」



繋がれた手を見て、私は思わず呟いていた。



原田「……夢なんかじゃねえよ、名前」



そう言って左之さんは少しはにかんだ。



名前「……だって、左之さんが私に振り向いてくれるなんて思ってなかったんだもん」

原田「……お前、島原で俺が言ったこと覚えてねえのか?」

名前「……えっ、何でそのこと覚えてるの」



左之さんが苦笑いしながらこっちを見ている。

……え、もしかして。
あれは、酔っ払ってやったことじゃなかったの……?



名前「……酔っ払ってあんな事言ったのかと思ってた」

原田「お前な……好きでもねえ女に接吻するわけねえだろ」

名前「左之さんならやりかねない」

原田「……俺を何だと思ってんだよ、お前は……」

名前「んー、手が早い男?」

原田「……まあ、否定はできねえ」

名前「いや認めるんかい」



こんな他愛ないも会話をするのは、いつもと変わらないのに。
私と左之さんの関係は、来る時とは異なっているのだ。

なんだかそれが急に恥ずかしくなって、私は思わず顔を伏せるのだった……。

<< >>

目次
戻る
top

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -