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──── 来た時と同じように、私たちは手を繋いで帰り道を歩く。
……でも、来た時と違うことが一つだけ。
私と左之さんの関係が "恋人" に変わったのだ。
名前「……夢みたい」
繋がれた手を見て、私は思わず呟いていた。
原田「……夢なんかじゃねえよ、名前」
そう言って左之さんは少しはにかんだ。
名前「……だって、左之さんが私に振り向いてくれるなんて思ってなかったんだもん」
原田「……お前、島原で俺が言ったこと覚えてねえのか?」
名前「……えっ、何でそのこと覚えてるの」
左之さんが苦笑いしながらこっちを見ている。
……え、もしかして。
あれは、酔っ払ってやったことじゃなかったの……?
名前「……酔っ払ってあんな事言ったのかと思ってた」
原田「お前な……好きでもねえ女に接吻するわけねえだろ」
名前「左之さんならやりかねない」
原田「……俺を何だと思ってんだよ、お前は……」
名前「んー、手が早い男?」
原田「……まあ、否定はできねえ」
名前「いや認めるんかい」
こんな他愛ないも会話をするのは、いつもと変わらないのに。
私と左之さんの関係は、来る時とは異なっているのだ。
なんだかそれが急に恥ずかしくなって、私は思わず顔を伏せるのだった……。
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