桜恋録 | ナノ


6



藤堂「なんだ?" おひさしぶりーふ " って。つーかそんな所にいねえで早く来いよ!飯食おうぜ飯!」

名前「え、あ、うん……」

永倉「名前ちゃん!やっと来てくれたか、待ってたぜ!」

名前「お、おお……」

近藤「おお、苗字君じゃないか!さ、座りなさい」

名前「は、はい………」



あれ、なんか、すっごいいつも通り……?

平助にグイグイと引っ張られ、私は無理矢理席につかされる。

……なんかこの感じ、久しぶりでムズムズするな。

そんな事を思っていると、平助が「なあなあ!」と私の顔を覗き込んでくる。



藤堂「この魚、美味かったから半分やるよ!」

名前「えっ、あ、ありがとう……」

沖田「……半分って、それ平助の食べ残しじゃない」

藤堂「う、うるせえな!しょうがねえだろ、半分食べちまったんだから!」

沖田「名前ちゃん、そんな残飯より僕のお味噌汁飲みなよ」

原田「総司お前、葱が入ってるからって名前に押し付けるんじゃねえ。……ほら名前、俺の沢庵やるぜ」

斎藤「……この豆腐も食べるといい」

新八「名前ちゃん、このおひたし食いな。遠慮はいらねえぜ」


みるみるうちに、私のお膳はお茶碗で溢れていく。

みんなの顔を見れば、さっきまでの空気が嘘だったかのようにニコニコと笑っていた。


……ああ。
私を優しく受け入れてくれるこの人たちに、これ以上心配かけちゃいけないね。

さすがに完全復活はまだ厳しいけど……。



原田「 ──── うめえか?」



私が1口、沢庵を口に運べば、左之さんが顔を覗き込んでくる。

……そんなの、決まってる。



名前「 ──── うんっ!すごく美味しい!」



みんなと食べるご飯は、美味しいに決まってる。
私がニカッと笑えば、みんなはホッとしたような表情になった。

……もしかしてさっきの重い空気は、私がいなかったから、とか?
そんなことある?

でも、私の笑顔でみんなを笑顔にできるのなら。
迷惑かけた分、ちゃんと埋め合わせしないとね。



名前「ちょっと平助、食べかけ寄越さないでよー!(モグモグ」

藤堂「って文句言いながら食うのかよ!」

名前「一君、お豆腐貰っていいの!?」

斎藤「……ああ、構わぬ」

名前「ありがとう!いやでもさすがに悪いし、半分こしよ!」

斎藤「!……ああ」

名前「新八っつぁん、このおひたし美味しい〜!」

永倉「そうか!うめえか!」

名前「ちょっと沖田さん、ちゃんと葱は食べなきゃダメだよ!はい!」

沖田「ちぇ。僕だけ返却かー」

土方「……ったくお前ら、静かに食えねえのか?」



土方さんがため息混じりに呟いたけど、なんだかその表情はいつもよりも柔らかい。

それに、数十分前までは「みんなに会うのが怖い」なんて思ってたのに、そんな思いはもうどこかへ消えてしまっていた。

みんなは、こんな私を受け入れてくれるんだ。
私の居場所は、ここでいいんだ。


ふと隣を見れば、左之さんが優しげな眼差しでこちらを見ていた。



名前「……左之さん。いろいろ本当にありがとう」

原田「ああ、気にすんな」



左之さんはそう言って、ワシャワシャといつものように私の頭を撫でてくれる。
左之さんの瞳は、本当に嬉しそうだった。

そして私は土方さんの方を見て、小さく礼をする。



土方「……」



土方さんはちらりとこちらに目をやっただけで何も言わなかったけど……。


何度でも、思う。

──── やっぱり私は、ここが大好きだ。






(ありがとう)


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