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名前の手から無理矢理刀をもぎ取り、名前を抱きしめる。
腕の中でガタガタと震える、小さな体。
名前「……さの、さ……」
原田「……名前、」
名前「……よかった……無事、で……」
そう言って笑う名前は、今にも消えてしまいそうな程に弱々しい。
──── 俺は一体、何をやっているんだ。
何が、"みっともねえ姿は見せられねえ" だ。
こんなに小さくて綺麗な手を、体を、血で染めてしまった。
俺は、男としても幹部としても失格じゃねえか。
名前を抱きしめる腕により一層力を込めた、その時。
「 ──── こ、こっちです!」
?「 ──── 左之」
聞き慣れた声が耳に入る。
目の前には、浅葱色の隊服。
原田「………斎藤………」
どうやら巡察で斎藤の隊が偶然近くを通りかかったらしい。
恐らく名前に任せていた男が、助けを求めたのだろう。
俺の腕の中にいる血で染った名前を見て、斎藤は一瞬目を見開いた。
斎藤「……何があった」
その問いかけに答えるように、俺は唇を噛んだのだった……。
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