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──── 蘇るのは、大好きな匂い。
そして、
唇に残る、柔らかな感触。
名前「あああああああああああ!!!!!」
土方「うるせぇ!!今何時だと思ってんだ!!!」
《千鶴 side 》
──── 今日は珍しく、名前は朝餉の時間になっても姿を見せなかった。
名前を呼んでこようと席を立ち上がろうとすると、平助君が「オレが行くよ」と代わりに行ってくれる。
……その後平助君はすぐに広間に戻ってきた。
しかしその隣に、名前の姿はない。
永倉「ん?平助、名前ちゃんはどうした?」
藤堂「飯、いらねぇって」
永倉「はぁ!?どうしちまったんだ、大丈夫なのか!?」
藤堂「わかんねぇ。具合悪いんじゃねぇの?来るなって追い返された」
千鶴「……名前……」
確かに、名前がご飯を食べたがらないなんて、ちょっとおかしい気がする。
名前は風邪気味でも、ご飯はしっかり食べるはずなんだけど……。
あとでお粥を持っていこうかな。
そう決めて、私はご飯に箸をつける。
……ふと、隣に座る原田さんが物憂げな表情をしていることに気付いた。
千鶴「……原田さん?」
原田「………ん?どうした、千鶴」
私が声をかけると、原田さんはいつものように優しげな眼差しを送ってくれる。
……だけど、心做しかあまり元気がないように見えた。
名前のこと、心配なのかな。
千鶴「……名前なら、あとでお粥を持って行って様子を見てきます。だから、大丈夫ですよ」
そう言うと、原田さんは少し驚いたような表情になった。
原田「……ああ。ありがとな」
原田さんはそう言って、大きな手で私の頭を撫でてくれた。
……この時は、名前と原田さんはかなり仲が良いから心配なんだろうな、くらいに思っていた。
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