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名前「ほ、本当に何もないんだって!あれは一君も大好きな仲間だよって伝えただけで!!それで和解したっていうか、前よりも打ち解けたっていうか……」
何故左之さんがそれを気にしているのかはわからないけど、私と恋仲だなんて誤解されたら一君に迷惑をかけてしまうので、私は必死に弁解する。
というか、一君を好きなのは絶対千鶴だと思うんだけど……。
──── その時。
トッ … と、軽く体を押され、私は畳の上に倒れた。
そして、
私の上に、覆いかぶさる左之さん。
ひいぃぃ!?何これ何かデジャブ!!?
名前「どっ……どうしたのっ……?」
自分の声が、掠れていた。
原田「……俺も、その中にいるのか?……俺じゃ、それより上には行けねぇのか……?」
名前「……へ……?」
いつもよりも低い声。
左之さん一体何を言って……?
パニックになりながらも、私は必死に頭の中を回転させる。
"その中" って何?"仲間" のこと?
"仲間" よりも親しくってこと……?
──── それって、つまり。
名前「っっっ!!!」
ボフンッと私の顔が赤くなった。
原田「……名前、」
名前「あ、……」
お酒が入っているせいか、いつもよりも熱っぽい左之さんの瞳が、私を捕らえて離さない。
心臓がバクバクと暴れていて、今にも口から飛び出てきそうだった。
や、やばい。
この状況はやばい!!!!
……時々、こんな自分が嫌になる。
普段はいろんな事を妄想してグフグフ言っているくせに、いざ真正面からぶつかって来られると、どうすればいいのかわからなくなってしまう。
名前「……かっ……厠に行ってきます!!!」
原田「!? お、おい!」
思い切り左之さんの胸板を押して避け、私はバタバタと起き上がりその場を離れる。
……離れようと、思ったのだが。
──── ズルッ
ビターーンッ!!
名前「ふぎゃ!?」
慌てたせいで着物の裾を踏んづけてしまい、派手にその場ですっ転んでしまった。
いってぇ思い切り顔からやったよ!!
やっちゃったよ!!!普通に恥ずかしいんだが!!!
原田「お、おい。大丈夫か?」
気づけば左之さんが、手を差し伸べてくれていた。
名前「ご、ごめんなさい……」
着物の重さで一度転べば1人で立ち上がれないため、私は素直にその手を借りる。
グイ、と引っ張りあげられた、その時。
──── ふわり、と左之さんのいい匂いが鼻を掠めた。
え?と思ったのも束の間、
私の唇に、何か柔らかくて温かいものが押し当てられる。
目の前には、左之さんの整った顔。
……何が起こったのかを理解したのは、その感触が全て消えてからだった。
名前「……ええええええええーーーーーっっっ!!?」
(え、え、え、え、え、?)
(……あぁ、やっちまった……)
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