桜恋録 | ナノ


5


原田「……名前、そんな所にいねぇで酌してくれねぇか」

名前「……うぅ……」



振り返れば、困ったような顔でこちらを見ている左之さん。

私は諦めて渋々彼の所に戻り、お酌をした。



原田「……そんなに俯くなよ、ちゃんと顔見せてくれ」

名前「……う……」

原田「……言い忘れていたな。綺麗だ、名前」

名前「っ!!」



ドクリ、と私の心臓が飛び跳ねた。

そんな私の様子には気付かず、左之さんは猪口を空にする。



原田「……君菊さんにゃ、気ィ遣わせちまったかな」

名前「……だ、だよねぇ! 絶対何か勘違いしてるよねぇ!! 」



何だか妙に落ち着かなくて、私は慌てて喋る。



名前「か、帰る時にちゃんと弁解して帰らなきゃなぁ!!」



いやーこりゃ参った!と私は笑ってみせる。
……絶対ぎこちなかったよ、絶対わざとらしかったよこれ。

だけど左之さんは私を見てフ、と優しげに微笑んだ。



原田「……俺は、お前となら誤解されてもかまわねぇけどな」

名前「……えっ、」



やめろォォォォーーー!!!


これ以上私をときめかせないでくれ左之さんんんんんん!!!!!

期待しちゃうから!
苗字単純だから期待しちゃうから!!!!



原田「……なァ。ずっと聞きてぇことがあったんだがよ……」

名前「……な、なに……?」

原田「……この間、斎藤と何があった?」



今かあああああああ!!!!!!
いつか聞かれると思ってたけど今かあああああ!!!!!!

もう2週間も前だよ、あんな告白まがいなこと無かったことにしたいよ!!!!(涙)



名前「……あ、あれはその……一君と和解の巻というか……」

原田「……そうかよ」



何で若干不機嫌なの左之さんんんんん!!!
酔ってるのか、あんたも酔ってるのか!?

すると左之さんは、少しだけ目を伏せて言いにくそうに言った。



原田「しかしお前は、その……斎藤といい仲になったんだろ」

名前「え、えぇ!?いやいやそんなわけないじゃん、誰が言ってたのそんなこと!?また沖田さんか!?」

原田「……お前、斎藤に言ってたじゃねえか。『大好き』ってよ」

名前「ちょっ、えっ、まって、なんでそれをっ……!?」

原田「……悪ぃ。盗み聞きするつもりはなかったんだが……」



マジかよおおおおおおお!!!

左之さんあの時いたのかよ!!!
聞かれてたのかよあれ!!!

私の黒歴史にランクインしそうなあれを聞かれていたことを知り、私の顔にはどんどん熱がこもる。

私ですら告白まがいのことって思ってるのに、あんな会話第三者が聞いたら絶対勘違いするじゃん!!!

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