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原田「……名前、そんな所にいねぇで酌してくれねぇか」
名前「……うぅ……」
振り返れば、困ったような顔でこちらを見ている左之さん。
私は諦めて渋々彼の所に戻り、お酌をした。
原田「……そんなに俯くなよ、ちゃんと顔見せてくれ」
名前「……う……」
原田「……言い忘れていたな。綺麗だ、名前」
名前「っ!!」
ドクリ、と私の心臓が飛び跳ねた。
そんな私の様子には気付かず、左之さんは猪口を空にする。
原田「……君菊さんにゃ、気ィ遣わせちまったかな」
名前「……だ、だよねぇ! 絶対何か勘違いしてるよねぇ!! 」
何だか妙に落ち着かなくて、私は慌てて喋る。
名前「か、帰る時にちゃんと弁解して帰らなきゃなぁ!!」
いやーこりゃ参った!と私は笑ってみせる。
……絶対ぎこちなかったよ、絶対わざとらしかったよこれ。
だけど左之さんは私を見てフ、と優しげに微笑んだ。
原田「……俺は、お前となら誤解されてもかまわねぇけどな」
名前「……えっ、」
やめろォォォォーーー!!!
これ以上私をときめかせないでくれ左之さんんんんんん!!!!!
期待しちゃうから!
苗字単純だから期待しちゃうから!!!!
原田「……なァ。ずっと聞きてぇことがあったんだがよ……」
名前「……な、なに……?」
原田「……この間、斎藤と何があった?」
今かあああああああ!!!!!!
いつか聞かれると思ってたけど今かあああああ!!!!!!
もう2週間も前だよ、あんな告白まがいなこと無かったことにしたいよ!!!!(涙)
名前「……あ、あれはその……一君と和解の巻というか……」
原田「……そうかよ」
何で若干不機嫌なの左之さんんんんん!!!
酔ってるのか、あんたも酔ってるのか!?
すると左之さんは、少しだけ目を伏せて言いにくそうに言った。
原田「しかしお前は、その……斎藤といい仲になったんだろ」
名前「え、えぇ!?いやいやそんなわけないじゃん、誰が言ってたのそんなこと!?また沖田さんか!?」
原田「……お前、斎藤に言ってたじゃねえか。『大好き』ってよ」
名前「ちょっ、えっ、まって、なんでそれをっ……!?」
原田「……悪ぃ。盗み聞きするつもりはなかったんだが……」
マジかよおおおおおおお!!!
左之さんあの時いたのかよ!!!
聞かれてたのかよあれ!!!
私の黒歴史にランクインしそうなあれを聞かれていたことを知り、私の顔にはどんどん熱がこもる。
私ですら告白まがいのことって思ってるのに、あんな会話第三者が聞いたら絶対勘違いするじゃん!!!
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