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原田 side
──── 斎藤が倒れたと聞いた。
俺らと同じように風邪など縁がないような奴だと思っていたから、聞いた時にはとても驚いた。
今は、新八も平助も総司も巡察だ。
斎藤の様子が気になったので1人で見舞いに行くことにした。
名前「 ──── それに全然避けてなんて…」
斎藤の部屋まで来て、障子戸を開けようとして俺はその手を止めた。
聞き慣れた声が聞こえたからだ。
原田「(………名前?)」
この状況で絶対にここから聞こえてくるはずのない、名前の声だった。
いつの間に、勉強以外で斎藤の部屋に入ることを許されるほど親しくなったのだろうか。
名前も斎藤も、何故かお互いに一線を引いてるような感じだったはずだが……。
……言葉では何とも言い表せないような黒い感情が、俺の中を占めてゆく。
何を、不安に思っているんだ?俺は……。
それに、盗み聞きなんて趣味じゃねぇ。
……それなのに、体が動かなかった。
斎藤「……俺は…ーーー」
斎藤が何か言っている。
だが、声が小さくて聞き取れなかった。
……ここに、いたくなかった。
斎藤が、名前が、いずれ言うかもしれない言葉が怖かった。
それなのに、やはり体は動かない。
名前「 ──── 私は、一君が大好きだよ」
……人生で一番、後悔した。
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