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──── ヌッ……
名前「うおわぁっ!!!」
突然曲がり角から現れた人影に驚いて、私は飛び上がった。
斎藤「……苗字、ここにいたのか。ちょうど探していた……」
名前「斎藤さん!お帰りなさい……って、大丈夫ですか!?全身びしょ濡れじゃないですか!!」
現れたのは、巡察から戻ったらしい斎藤さんだった。
しかし彼の着物や髪はびしょ濡れ。
特に着物は色が変わるまで湿ってしまっている。
斎藤「急な雨だったのでな…」
名前「お風呂入ってきてください、もうお湯張ってあるので!それと新しい着物置いておくので、ちゃんと今着てる着物は洗濯に出しておいてくださいね」
なんだか私らしくないセリフだ、これはいつもなら千鶴が言ってるからかな。
母親のような自分の発言に違和感を覚えながら斎藤さんの顔を窺うが……。
何故か、私の言葉に反応を示さない斎藤さん。
あれ?
斎藤「……苗字、ちょうどあんたに話があったのだ……」
名前「ダメです風邪引きますよ!話は後でゆっくり聞くので、早くお風呂入って着替えてください」
斎藤「あんたは甘物が好きだと言っていたな……」
名前「すみません、私の話聞いてます?」
斎藤「あんたは金も持ってないから好物も買えぬだろう……」
名前「斎藤さーん!? 私の声聞こえてますかー!?」
斎藤「だから今日はあんたに土産を買ってきた……」
名前「嬉しい!嬉しいけども!さっきから絶妙に会話噛み合ってませんよ、大丈夫ですか!? 聞こえてます!?」
一体どうしちゃったの、斎藤さん!!
さっきから私のセリフが全スルーされてるんだけど!?
すると、斎藤さんは懐から何かを取り出して私にくれた。
斎藤「団子を買ってきたのだが、団子は好きか……?」
名前「はいものすごく好きです!………だけどこれお団子じゃないです、昆布です!!何をどうやったらこんな間違いするんですか、目ェやられたんですか!?」
斎藤「それから今日の稽古なのだが、午後から昆布と一緒に豆腐の稽古を……」
名前「昆布と一緒に豆腐の稽古って何!?斎藤さん、もしかして熱ある!? 具合悪いんですか!?」
よく見てみれば、若干斎藤さんの顔が赤いような……。
名前「絶対熱ありますって! 早く着替えてください!!」
斎藤「では俺は総司に用がある故失礼する……」
名前「人の話聞いて!?」
俺の話を聞けえええ〜〜〜!!!
某有名なあの曲が頭をよぎった。
斎藤さんはそのまま私を通り過ぎようとする。
……が、
──── フラッ……
ドサッ
名前「うわあああああ!?」
斎藤さんの足が一瞬ふらついたかと思うと、私に向かって倒れてきた!!!
間一髪でそれを受け止めたものの……。
名前「……斎藤さん………斎藤さん!?」
彼の意識は、もうそこには無かったのである……。
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