桜恋録 | ナノ


1


名前「 ────千姫は、私が守る!!」






千姫「名前ちゃん………」



私は腹を括って、男をキッと睨みつける。

……長期戦に持ち込まれたら、女の私に勝ち目はない。
腕力も体力も体格も、何もかも奴に劣っているからだ。

──── でも、何としてでも倒す!!!



「ぐっ…………」



何故かその男は顔を顰めると、少しだけ後退った。

しかしそれも束の間のことであった。



「うおおおおおおおお!!!!」



男が雄叫びを上げて刀を振りかざしてくる。

──── きた!!!!



千姫「名前ちゃん!!」



私は瞬時にその攻撃を交わす。



「ちっ……!」



私はほんの一瞬、男がバランスを崩したところを見逃さなかった。

瞬時に私は懐から苦無を2本取り出し、男の両手にめがけて投げつける。


──── ドスッ ドスッ



「ぐっ、ああああああああ!!!」



どうやら2本とも命中したようだ。
近距離で投げたためかなり深く突き刺さったらしく、男の手から血が吹き出す。

うっ……気持ち悪い……。
だが、そんなことを思っている場合ではない。



名前「おりゃあああああああ!!!!!!」



私は刀を振りかざし、男の刀に向けて力いっぱい叩きつけた。

ガキイィィン!という金属音が響き渡り、刀は男の手から離れて地面に叩きつけられる。



「このっ………ガキッ………!」



男が拾う前に、私はその刀を蹴飛ばした。

そして男が刀を拾おうと手を伸ばした瞬間を狙い、私は自分の刀の柄で力いっぱい男の鳩尾を殴る。



「ガハッ………」



男はフラフラとした足取りになった。
鳩尾を抑えて、前かがみの姿勢になっている。



"斎藤「 ──── 一撃を加えたからといって、相手の意識がある限りは油断するな。迷わず急所を突け。一瞬の迷いがあんたの生死を分ける 」"



頭の中で、斎藤さんの言葉が木霊する。



名前「 ──── 斎藤さん!!あなたの教えを守りましたああああ!!!」



そう叫んで私は、刀を柄を今度は男の人中に叩きつけた。



「ぐあっ…………」



男はうめき声をあげると、ドサッとその場に倒れ込む。
男は倒れたまま、ピクリとも動かない。

た、倒した……のか………?
さすがに死んではいない……よね?



千姫「 ──── っ名前ちゃん!逃げるわよ!」

名前「う、うんっ!」



千姫の声で私はハッと我に返る。

そして今度は千姫に手を引かれて、一目散にその場から走り去るのだった……。

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