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ハッとして前に視線を向ければ、先程私に股間を蹴りあげられた男が立っていた。
……まずい。
私は咄嗟に千姫を自分の背中に隠す。
「さっきはよくも、やってくれたじゃねえか。え?」
かなりブチ切れているようだ。
そりゃそうだ、股間蹴りあげられたんだもの。
死にかけてるんだもの。
千姫「……名前ちゃ、」
名前「逃げるよ!!」
「待ちやがれ!」
私は千姫の手を引いて再び猛ダッシュする。
千姫と2人で、必死に走った。
途中、男を巻こうと狭い路地に逃げ込んだ。
……それが間違っていたらしい。
名前「 ──── うそ!」
千姫「行き止まりだわ!」
目の前には、よじ登るには厳しいほどの高い塀が私たちの行く手を阻んでいた。
「逃げ足だけは早いガキどもだ」
ハッとして振り返れば、息を切らした男が立っている。
追い詰められた!!
「小僧、いつまで逃げる気だ?武士なら武士らしく戦いやがれ!」
そう言って男は刀を抜く。
名前「………千姫、下がってて」
千姫「まって!ダメよ名前ちゃん!」
名前「大丈夫だよ」
私は千姫に向けてニカッと笑うと、男の方を向いて脇差を抜いた。
本当はメインの武器は苦無だけども、苦無では致命傷は与えられず一対一では不利なので、一応斎藤さんから剣術の稽古も受けているんだ。
だけど……。
──── こわい。
私は、今から戦うんだ。
相手は斎藤さんじゃないから手加減もしてくれない。
あいつは、私を殺すつもりでやってくるんだ。
──── 死ぬかもしれない。
私の手足はカタカタと小刻みに震えている。
こわい。
とてつもなくこわい。
……でも。
この手足の震えは、武者震いだ!!!
名前「 ──── 千姫は、私が守る!!」
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