桜恋録 | ナノ


3


名前「 ──── ふう。……大丈夫?」



5分ほど走り続けて私は立ち止まり、女の子の方を振り返る。

あの男が追ってくる気配はないから大丈夫だろう。



?「ええ。どうもありがとう、助けてくれて」

名前「ううん。はい、これ」

?「あっ!ありがとう」



巾着袋を渡せばふわりと微笑んでくれる女の子。
可愛い!!!

………てかちょっと待って、この子って絶対、



千姫「私、千っていうの。あなたは?」

名前「千姫!?!?」



やっぱり!!? だよね!!?
めっちゃ似てると思った!!



千姫「……あら、私のことを知っているの?」

名前「え"」



少しだけ千姫が眉を顰めたのがわかった。

やばいやばいやらかした!!!
なんでまた同じような失敗するんだよ私は!!!



名前「あっ、いやっ………そ、そうそう!千鶴!千鶴からよく君の話を聞いてて!」

千姫「千鶴って……あら、あなた千鶴ちゃんの知り合いなの!?」

名前「そ、そうそう!実はわた……じゃなかった、俺も訳あって新選組の屯所に居候中なんだ」



あっぶねーーーー!!!!
ごまかせた、助かった!!!

今日ほど口が回る自分に生まれたことを感謝した日はないだろう。

千姫は「そうだったの!」と言って私の手を握ると、目をキラキラと輝かせた。



千姫「千鶴ちゃんは元気?」

名前「うん!元気元気!」

千姫「そう、よかったわ!今度会いに行こうかしら」

名前「うんうん、おいでよ!きっと千鶴も喜ぶよ!」



そう言いながら、内心ホッと息をつく。



千姫「ところで、あなたのお名前聞いてもいいかしら」

名前「あ、俺は苗字名前だよ。よろしくね」

千姫「名前ちゃんね、よろしくね」

名前「うん!……って、ん?」



名前?ちゃん??
やっべ、返事しちゃった!!!



千姫「……あっ、ごめんなさい!もしかしてあなたも内緒にしているの…?」

名前「あ、はは……一応これでも男装中……」

千姫「やだ、ごめんなさいね」

名前「いいよいいよ!屯所でもそう呼ぶ人もいるし」

千姫「そう?じゃあ、名前ちゃんって呼ぶわね、その方がしっくりくるし」

名前「うん!」



やっぱり私の男装もわかりやすいのかな?
まあ、男と女じゃ元の顔立ちが結構違うからなぁ……。

てか、千姫めっちゃ可愛い。
千鶴みたいなやまとなでしこも好きだけど、千姫みたいなおてんば女の子も好きだわ。

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