桜恋録 | ナノ


2


どういう風の吹き回しかわからないけど、土方さんが外出許可のチャンスをくれた。

しかも地図を見る限りだと屯所からそんなに離れてはいないので、指定の時間内には余裕で戻れそうだ。

あれかな、ここ数週間は2日に1回のペースで頼みに行ってたから少しは考えてくれてたのかな。
我ながら、頑固汚れもびっくりのしつこさだよ。

よーし、頑張って外出許可ゲットするぞ!!
てかこんなの余裕だし!!


私はるんたるんたとスキップしながら歩いて行く。

……すると、



?「……何するのよ!!……」



女の子の声が聞こえた。

一瞬、『寄り道をするな』と般若顔で言う土方さんの顔が浮かんだが、そんなことは気にしていられない。

声のする方を見ると、綺麗な着物を着た可愛らしい女の子が、ガタイのいい男に腕を掴まれていた。
男のもう片方の手には色鮮やかな巾着袋が握られている。



「はっ!女のクセになかなか金持ってんじゃねーか、生意気な野郎だ」

?「返しなさい!!」



……どうやらあの男は、女の子からお金を奪い取ったらしい。
女の子は男を睨みつけているが、男に腕を掴まれているせいで身動きが取れないようだ。

なんてひどいことを!!



名前「ちょっと、アンタ!」

「ああ?」



私はズカズカとその男に歩み寄る。



名前「何考えてるの、今すぐそれをその子に返しなよ!」

「ああ?この女がぶつかってきたのに謝りもしねえから慰謝料だよ、慰謝料!」

名前「はあ!?」

?「ぶつかってきたのはそっちじゃない!」

「うるせぇ!!!」



ハッ!と鼻で笑って、私に向かって巾着袋を振ってみせるその男。

……ぷつん、と私の中で何かが切れる音がした。
左之さんに似て短気になってきたのかもしれない。

私はズカズカとさらに男と距離を詰める。



「ああ?何か文句でもあるのか?」

名前「別に。ただ、お金よりももっといいものをあげようと思って」



私はそう言うと、男の股間を力いっぱい蹴り上げた。
ドガッという鈍い音がして、男は目を見開く。

そして男は痛みに耐えきれずそのままうずくまってしまった。

私は瞬時に男から巾着袋を奪い返すと、女の子の手を引いて思い切りダッシュし、その場を去ったのだった……。

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