茜空に飛べ! | ナノ


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(no side)

背水の陣状態に陥った名前達。
一方の銀魂もある種の背水の陣状態であった。


銀時「あーもう酒なんて二度と呑まねぇ!なんか毎回これ言ってるけど今回はマジで誓うわ…」


トイレから一歩も出られない。
しかしそんな銀時が籠るトイレの個室を、ドンドンと強く叩く音。


銀時「はい、入ってますけど?」

「いつものちょうだい」

銀時「あ?」

「早くいつものちょうだいって言ってんじゃん!あれがないと私もうダメなの!」

銀時「いや、いつものって言われても…いつものより水っぽいんですけど…」


某コンビ芸人のすれ違いコント状態になっていることなど、この状況ではお互いに気づけるはずもない。


「何しらばっくれてんのよ!金のない私はもうお払い箱ってわけ!?いいわよ、あんたらの事警察にタレこんでやるから!」

銀時「警察に言う?別にいいけど……何がって言われるよ?」



「誰に話しかけてるんだ、ボケが。おめーに用はねーんだよ、ブタ女!」



─── ダンッ!!


怒鳴り声と共に響いた打撃音。
瞬時に銀時は木刀を手に、トイレから飛び出す。

床には、あの写真に写っていたガングロハム子が倒れていた。
そして倒れた彼女を囲む悪人面の天人達。
瞬時に銀時は事態を察する。


銀時「ハム子……悪かったなオイ。男は男でもお前……エラいのに引っかかってたみてえだな」


するとそこへ、長髪の男が現れる。
あの立ち振る舞い、纏う空気……奴らのボスか。


蛇絡「ぱぱっと殺って帰るぞ。夕方から見たいドラマの再放送があるんだ」


剣の鋒が、銀時の目と鼻の先に突きつけられた。


銀時「俺もだ」


不敵な笑みを浮かべる銀時に、男は静かな眼差しを向ける。


蛇絡「俺は元来、人嫌いの激しい質じゃねぇ。
だがこれだけは許せんというのが三つあってな。一つ目は仕事の邪魔をするやつ。二つ目は便所に入っても手を洗わないやつ。三つ目は汚らしい天然パーマのやつ」

銀時「へっ…」


男の目の色が、変わる。


蛇絡「全部……該当してんじゃねーかぁぁぁ!!!」


男の振りかざした剣が豪快に床のコンクリートを砕いた。


銀時「そいつは光栄だ。ついでに俺の嫌いなやつ三つも教えてやろうか?」


銀時は華麗に男の攻撃を避け、男の周りを囲う部下らしき者達目掛けて木刀を振るった。


銀時「ひとーつ、学園祭準備にはしゃぐ女子!」

「ぐへっ…」

銀時「ふたーつ、それに便乗して無理にテンション上げる愚の骨頂男子!」

「がはっ…」

銀時「みーっつ、それら全てを抱擁し優しく微笑む教師!」

「ぐはっ…」


口ほどにもない。
一瞬にして下っ端達は白目を向いて倒れてしまった。

しかし仲間が全てやられてしまったにも関わらず、男は全く焦りを見せない。


蛇絡「てめぇ、要するに学園祭が嫌いなだけじゃねーか。よほど暗い青春を送ったな」

銀時「てめーほどじゃねーよ。いい年こいて便所でスーッパッパか?もっとも、テメーらが好きなのはシャレにならねえ葉っぱみてえだがな」


虫の息になりかかっているハム子が力を振り絞って銀時の足を掴む。
その手を掴み、銀時はハム子を肩に担いだ。


銀時「おたくら天人が来てからアブねーもんが増えたからよォ。困るぜ、若者をたぶらかせてもらっちゃあ」

蛇絡「たぶらかす?勝手に飛びついてきたのはそのブタだぞ?望み通りのもんやってやったのにギャーギャー騒がれてこっちも迷惑してんだ」

銀時「そうかい。バカ娘が迷惑かけて悪かったな、連れて帰って説教するわ」


ハム子を背負ったまま扉を開ける。
しかしその外には、たくさんの天人達が待ち構えていた。
なるほど、奴が焦っていなかった理由はこれか。


銀時「オイオイ、みんなで仲良く連れションですか?便器足んねーよ…」


ハム子を担ぎながらこの人数とやり合うのは多勢に無勢、さすがの銀時でも分が悪い。
しかし一刻も早くハム子を連れ帰って医者に見せなければならない。
多少無茶をしてでも薙ぎ払って突破するしか。

と、その時だった。


「コラァ、面倒かけんじゃねえ!」


遠くで怒鳴り声が響く。
無意識にそちらに視線をやり……目を、 見張った。

天人達に腕を掴まれて無理やり歩かされている神楽と新八。
見たこともないほどに虚ろな表情だった。
銀時の心臓が大きく跳ね、嫌な予感を煽る。


銀時「新八!神楽!オイ、どうした!」


そして最後に、天人に抱えられているのは名前。
気を失っているようで、美しい茜色の髪から覗く頬に涙の跡が見えた。


銀時「てめーら、何しやがったんだ!!」


何を。
アイツらに、一体何を。
まさか、気丈な名前が泣くほどのことを?

守りたいのに、これ以上失いたくないのに。
大量の敵に阻まれ、押し寄せてきて、彼らの元へこれ以上進むことが出来ない。


蛇絡「お前、目障りなんだよ」


突然男が攻撃を仕掛けてくる。
動揺した銀時は避けながらもあっという間に壁まで追い詰められ、

─── ド ス ッ……


銀時「がっ…!!」


鮮血が滲んだ。
左肩を刺された銀時は窓ガラスを突き破り、そのままハム子と共に落下していく…。


蛇絡「また血が付いちまったよ。ダメだこりゃ、新しいの買おう」


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