茜空に飛べ! | ナノ


4

沖田がふらふらと寄り道をしながら屯所に戻ると、ちょうど巡察から帰ってきたらしい藤堂と鉢合わせた。
 

藤堂「あれ、総悟。アイツは?」

沖田「仕事紹介して置いてきた」

藤堂「へぇ、じゃあ上手くいったんだ」

沖田「まァな」

 
沖田としては文字通り“置いてきた”だけなので、今頃名前がどうなっているかはこれっぽっちも知らないのだが。
完全に空返事である。
 

藤堂「っつーか、どこの店?本当にやべえ所じゃねえんだろうな?」

沖田「おめぇは随分と心配性だな。安心しろよ、万事屋の旦那の所でィ」

藤堂「……は?」
 

藤堂は沖田の顔を二度見した。
文字通りの綺麗な二度見であった。
 

藤堂「……ちょっと待て、今万事屋っつったか?」

沖田「そう言ってんだろィ。依頼ってことで15万で売ってきた」

藤堂「馬鹿なの!?何やってんのお前!?」
 

しれっととんでもないことを言い放った沖田に、藤堂は目を白黒させた。

 
藤堂「つーかなんだその15万って。ンな大金どっから、」

沖田「俺とおめぇのポケットマネーでィ」

藤堂「オイさらにとんでもねーこと言ってんぞ、お前なんで人の金勝手に使ってんの!?」

 
あの金は沖田と藤堂の実費とはいえ、沖田は藤堂に許可を取っていなかった。

数年来の付き合いで親友という2人の間柄と藤堂の懐の深さが無ければ、警察沙汰レベルの横領である。
 

沖田「おめぇと俺で8:2な」

藤堂「ほぼ俺じゃねえかよ!!」

沖田「ンで俺の分は土方コノヤローに請求する」

藤堂「……頭痛くなってきた……」

沖田「別にいいだろ、アイツにさっさと仕事見つけさせて出て行かせろってのは土方コノヤローの指示だぜィ。虎も上に請求したらいいじゃねェか」

藤堂「いやできるわけねえだろこんな大金を事前の申請無しに!」

沖田「おめぇは真面目だねィ」

藤堂「お前が不真面目すぎんだよ」
 

この同僚の図々しさと自由奔放さには呆れたものだ。
ある意味世渡り上手なのかもしれないが、沖田の尻拭いはいつだって藤堂か土方が請け負うことになるのである。

そして藤堂の不安の種はもう一つ、名前のことだ。

確かに万事屋とは知り合い…というか腐れ縁だが、まさかそこに売り飛ばしてくるとは。
人を無碍に扱う連中ではないと思うが…世間知らずなあの娘が、あんなちゃらんぽらんがリーダーのあそこでやっていけるのかどうか。

あとで様子を見に行かないと、と藤堂は大きなため息を吐いたのである。

<< >>

目次

戻る
top
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -